『愛という名の呪い』歌詞 試訳・コメント
『グランギニョル』ラストに流れる『愛という名の呪い』の英語詞を対訳してみました。歌詞カードに作詞の吉次さんによる翻訳が掲載されており、英語詞と同じく三行目まで綺麗に頭韻を踏んでいる素晴らしい訳なのであれが翻訳として正解だと思います。しかし音優先の訳の性質上元詞の意味が入りきっていない箇所が多く、そこを拾った対訳をしてみたいと思ったのがこちらの記事作成のきっかけです。
うまく訳せないところもあったためひとつの形として「試訳」としています。参考までにお楽しみください。下の方に訳後のコメント、ちょっとした解釈ものせています。
なお、英語詞は公式サウンドトラック『繭期音源蒐集』付属の歌詞カードを参考にしております。元の歌詞及び公式の日本語詞がのっております。未所持の方は是非ご購入ください。英語詞に合わせて公式の訳詞の一行目がA二行目がU、三行目がまたAの頭韻になってて英語と日本語両方で韻踏んでるのめちゃくちゃ凄くてうっとりします。(ダイマ)
試訳 ※英訳でひっかかったところには注釈をいれています
風が吹き、遠く帆を進める
種が芽吹き、空に鳥が落ちる
大きくなってゆく歌声、手の中に溶ける砂、
雲は空の中に滑り流れ、
失った木の影、揺れる大地の中の種、
木々は風の中に滑り流れる
草*1は育ち、前に進み、
世界に導かれ、世界に護られ、
静かに眠る、凍える夜の寒さの中
雲は空の中であたたまり雨が降る
護る木の影、導く木漏れ日、
空のなかの歌*2は終わりの時まで夢に溶ける
台詞に歌われ台詞に浮かび、
世界を越え歩き遠く流れる
知っていたことが知らなかったことに変わりゆく光景
結末は誰も知らず巡る
言葉たちは果てた台詞の上で回る*3
台詞は終わりの時まで眠る、夢の上で夢見て
夢の歌のなかで眠る*4
コメント
第一連、第二連は「種」が主体になっていると考えていいかもしれません。第一連で芽吹き、第二連で成長し草が萌えでる。とすると、二連の「世界に導かれ、護られ」「凍える夜の寒さのなかで静かに眠る」という文の主語にあたるのはこれらになります。私ははじめ、この曲の使用場面を考え、種=ウルを示しているのかなと思いました。世界には絶望しかないと言い、訪れる夜におびえながらもダリに護られて(護ろうとされて)いたことを考えるとなんともしっくりきそうです。ただ、この「種」は英語詞だとseedsとなっています。複数形です。grassに関しては加算不可算両方ありますが、草を草原にちかい意味合いでとらえる今回の場合不可算名詞とみていいでしょう。ですので、そのまま種=ウルとするのは少し違うっぽいです。
ここで『愛という名の呪い』が流れる場面を思い出してみると、複数回言葉にしてウルに対して「蒔かれた」ものがありました。曲名通り「負けるな」という呪いです。これらを踏まえて、ここのseedsは「ウルにかけられた呪い」だと考えるとよさげです。
それから、第一連と第二連に共通して「木」が登場しています。第一連の「失った木」と第二連の「護る木」です。種の意味を考えると失った木=スー、護る木=ダリでしょうか。この部分は訳では同じ「木」としたものの、元の歌詞だと使われている単語が違い、第一連がa tree、第二連がa woodになっています。treeとwoodの違いについてはtreeが自然に生えている状態、woodが加工されたものという認識です。血を分けた生みの親と血縁関係はない育ての親という意図での単語の使い分けのように思えます。
一気に雰囲気が変わり壮大さが増す第三連以降の歌詞はかなり示唆的です。この先の物語を歌っているようです。特に三連三行目から五行目は、ウルにかけられた呪い及び『グランギニョル』という物語を発端とする今後の悲劇、そしてソフィの放浪を彷彿とさせます。『LILIUM』の「永遠の繭期の終わり」の中に「グランギニョルの幕は閉じる」とうたわれていることを考えると、こじつけられなくもないでしょう。またこの連ではlineとwordsの対比が印象的です。台詞、つまりその時話者が意図をもって発した言葉の意味は失われ、言葉だけが残るといった意味でしょうか。ウルの言った「友達」という台詞がソフィの中で言葉としてのこり、「親友」という言葉の輪郭に縋っている様子などが当てはまります。
対訳だとやはり歌詞カード掲載の日本語詞と大きく意味合いが変わってしまいました。このブログは参考程度に考えてください。歌詞カードの方が当たり前に綺麗でうまい訳をしてるのでぜひぜひチェックしてみてください。
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