『呪いの子』ロンドン公演(2020)思い出し感想

日本版をみるまえにロンドン公演の記憶を一回ちゃんとブログにしておくぞ~!の記事です。日本版を観た後に私が読み返す用。演出脚本そのほか諸々ネタバレしかないので日本版を完全初見にしたい人は読まないでください。

 

戯曲自体は2016年の原語版発売当時に速攻で読みました。そのあと日本語版も読みました。

戯曲を読んだ時の印象は「公式の二次創作!」でした。ラブネバ。私は作品の設定にそこまで納得いってないんだよね。ローズの性格があんなふうになっちゃったことも、ハリーがパーセルタングを使えてるのも。デルフィーについては、「思い込みが激しくて闇の魔術に傾倒しているめちゃめちゃ魔法の才能がある女の子」だと思ってどうにか自分を納得させてたし。この辺の脚本に対しての感想は公演みてもそんなに変わらなかったです。それはそうとスコーピウスのキャラクターは凄く好きだったし当時は日本公演があるなんて思っていなくて、一度は劇場でみておきたかったのでみにいったんですよね。

 

結果ドはまりして帰ってきた。

嵌ったのは役者さんのお芝居によって「キャラクター」が戯曲の中の存在から目の前に受肉したことによるものが大きい。スコーピウスってキャラクターだけでなくて彼を取り巻く関係性ごと具現化して、わあってなってしまった。もちろん劇場空間による作用も十分にある。やっぱり舞台って劇場でみてこそのものだな~って改めて感じた。

あとかなりの密度のストプレを5時間、コテコテのブリティッシュイングリッシュで浴びるので今の私の英語力だと結構疲れるのと集中がもたないから事前に戯曲を読んでおいてよかった。話を知っているからこそアルバスとスコーピウスの関係の機微とか、ハリーやドラコなどのキャラクターの掘り下げなんかに集中できてのめりこんでった感じ。作品のファンとしてみたい「解釈」のところをがっつり(しかも目の前で)見せてくれるからキャラクターに思入れがあると嵌る。セリフのひとつひとつが重たくて一部でも二部でもいろんなところで泣いてました。

 

特にスコーピウス役のジョナサン・ケースくんの演技が良かった。私はそもそもスコーピウスが好きだからどうにせよスコウ中心で作品をみてしまうのだけど。

ジョンくんのお陰でチケットが増えたといっても過言ではない。

全体的な演技の方向性としては「歴史オタク」の成分が強め。話しかたをあえてギークっぽくしていて愛らしいしとにかくユーモアにあふれているからその分シリアスなシーン(「お葬式に来て。それから友達でいて」とか)とのギャップが凄い。とにかく喜と哀のコントラストがきれいだった。基本的に明るくふるまっているキャラクターで楽しそうな時は楽しそうであるのだけど、常に哀しみが根っこにありそれがむき出しになったときの破壊力が凄まじい。それから、とにかくよく泣くスコーピウスだった。顔を真っ赤にして涙をぬぐいながらセリフを言っている姿が大変印象に残っています。個人的にスコーピウスがドラコの前で涙をみせていたことが凄く衝撃的で。ドラコ・マルフォイの場合、上級生になればなるほど自分の「弱さ」を外に晒すことを絶対に良しとしなかったはずだから。父親の前で涙を流すなんてもってのほかだっただろうし。だから、スコーピウスがドラコの前で「泣ける」というのは凄いことだなって思って。スコウをそう育てたドラコとアストリアが後ろにいるんだよな。というかマルフォイ親子の関係が常に凄く良かった。ぎこちないながらも親子をしている二人が愛しい。If世界線その②から帰ってきた後の、「アルバス! ハリー!! ……やあ、パパ」「やあスコーピウス」のところとか、過去に飛ばされてしまったアルバスとスコーピウスが無事にハリーたちと再会するところとの「お前もハグをしたかったらしてもいいんだぞ」って言ってしばらくスコウを追いかけるドラコと逃げるスコウとか。ここはアンダーの子がスコウに入ったときはすんなりハグしてたのでジョンくんのスコウはまだドラコとの距離をはかりかねてるんだなと思って好きでした。

ヴォルデモートの手に落ちた世界でも、「ヴォルデモートに栄光あれ」のポーズをあえてゆっくりとやってみせたのは、ドラコなりになにか違和感を感じてスコウにポーズを教える意図もあったのかなと思った。ところで二幕の蠍王の衣装はかっこよすぎてどうかと思う。めちゃめちゃ好き。

一番好きなシーンは”Try my life!”。スコウ好きな人だったら絶対ここの演技は注目してみるよね……。アルと言い争っている間、終始涙目で顔を真っ赤にしていてとにかくつらかった。孤独の表現がうますぎる。体格が大きく(おそらく185㎝くらい)彼の杖とおなじく常に猫背になっているのが背負っているコンプレックスを象徴しているようだった。あと単純に間の取り方とかセリフ回しが上手い。年上のキャストも多い中客席の笑いを一番かっさらっていってた。すごい。彼のスコーピウスを観られたことは財産だなと思う。

 

その他だと大人になったハリーとドラコの関係も見どころのひとつ。歳をへてお互いにお互いにしか見せない面があるのがいい。軽口をガンガン叩くし、かと思えば息子のことで本音を晒すし。ハリーにとってもロンやハーマイオニーに接するのとは違った気の置けなさのようなものが見えるのがいいなと思います。

一幕の二人の決闘のところはわかりやすくテンションあがるポイントです。二人ともめちゃめちゃ活き活きしている。「君練習してただろ!」「老いたかポッター」「君と同じ年です~~」のやり取りの軽快さがいい。ほんとうにこんな感じの言い方だった。それから「君のキッチンを汚してすまない」「私のじゃないわ、ハリーのよ」の後でハリーの方を二度見するのとかも好き。

ドラコがスコウへの感情を打ち明けるのってハリーの前でだけなんですよね。それから「ハリーたちが羨ましかった」というシーンはやっぱりどうしても泣ける。

 

他のところだと、If世界線その①のハーマイオニーのDADA。戯曲と舞台で印象がかなり変わったところだった。教師のハーマイオニーはロンの名前が出た瞬間に涙ぐみはじめたのにはかなり驚いたし最後にPATRONASと書いてある黒板のRONの文字に哀し気に触れているのも胸が詰まった。

 

演出については、専用劇場作らないとどうしようもないな……という部分が多々(だから日本版連れてくるときに専用劇場を置きますってなって納得)。ものすごく目新しい演出があるとかではないんだけど、実際の炎とか巨大なディメンターとか、とにかく潤沢な予算を使って魔法が実際舞台上で繰り広げられるのは楽しい。あれは本当に魔法だ。演出で一番圧倒されるのは何といっても三部ラストの会場全体に文字が浮かび上がるシーン。圧倒される(あそこ頼むから日本ディズニーみたいにダサフォントの日本語が浮かび上がるなんてことにはならないでほしい)。

あとダンス! WandダンスもVマーチもかっこよくて見応えがあって最高です。この2シーンの印象がかなり強かったから、日本版のキャストが発表された時に踊れるメンバー多めだったのは納得でした。

ラストのお墓参りのシーン、ちゃんとお墓に名前が刻んであるのは前方席で観たときに気づいた。リリーやジェームスは勿論、ヘドウィグの名前もありました。あとR.Bの文字も。レギュラス・ブラックか……?って思ったりしたけどまさかね。他にもたくさんお墓があったけれど全部はみえなかったからここは日本版で確認したいところ。

 

あと客席の反応もこの作品ならではだなと……。セブルスの口から「ネビル・ロングボトム」の名前が出た瞬間の客席の空気が凄く印象的だった。「あぁ……」ってめっちゃみんな溜息ついてて、自分の知っている歴史と繋がった感が面白かった。

この演目、観客がハリポタ本編全部知ってるのを前提につくってあるから普通だったら観劇へのハードルめちゃめちゃ高いのにそれでもこんだけ集客できてるのとんでもないコンテンツ力。

 

とりあえず全体的に好きなシーンだらけだから、日本公演は短縮版なのがめちゃめちゃ怖い。どこが削られちゃうんだろう。BWの短縮版のレポは怖くて覗いていないです。折角なら初めましての要素があったほうがきっと面白いしね……。私の観劇は7月なのでそれまでにもう一度戯曲を読みかえそうとおもいます。