『呪いの子』ロンドン公演(2020)思い出し感想

日本版をみるまえにロンドン公演の記憶を一回ちゃんとブログにしておくぞ~!の記事です。日本版を観た後に私が読み返す用。演出脚本そのほか諸々ネタバレしかないので日本版を完全初見にしたい人は読まないでください。

 

戯曲自体は2016年の原語版発売当時に速攻で読みました。そのあと日本語版も読みました。

戯曲を読んだ時の印象は「公式の二次創作!」でした。ラブネバ。私は作品の設定にそこまで納得いってないんだよね。ローズの性格があんなふうになっちゃったことも、ハリーがパーセルタングを使えてるのも。デルフィーについては、「思い込みが激しくて闇の魔術に傾倒しているめちゃめちゃ魔法の才能がある女の子」だと思ってどうにか自分を納得させてたし。この辺の脚本に対しての感想は公演みてもそんなに変わらなかったです。それはそうとスコーピウスのキャラクターは凄く好きだったし当時は日本公演があるなんて思っていなくて、一度は劇場でみておきたかったのでみにいったんですよね。

 

結果ドはまりして帰ってきた。

嵌ったのは役者さんのお芝居によって「キャラクター」が戯曲の中の存在から目の前に受肉したことによるものが大きい。スコーピウスってキャラクターだけでなくて彼を取り巻く関係性ごと具現化して、わあってなってしまった。もちろん劇場空間による作用も十分にある。やっぱり舞台って劇場でみてこそのものだな~って改めて感じた。

あとかなりの密度のストプレを5時間、コテコテのブリティッシュイングリッシュで浴びるので今の私の英語力だと結構疲れるのと集中がもたないから事前に戯曲を読んでおいてよかった。話を知っているからこそアルバスとスコーピウスの関係の機微とか、ハリーやドラコなどのキャラクターの掘り下げなんかに集中できてのめりこんでった感じ。作品のファンとしてみたい「解釈」のところをがっつり(しかも目の前で)見せてくれるからキャラクターに思入れがあると嵌る。セリフのひとつひとつが重たくて一部でも二部でもいろんなところで泣いてました。

 

特にスコーピウス役のジョナサン・ケースくんの演技が良かった。私はそもそもスコーピウスが好きだからどうにせよスコウ中心で作品をみてしまうのだけど。

ジョンくんのお陰でチケットが増えたといっても過言ではない。

全体的な演技の方向性としては「歴史オタク」の成分が強め。話しかたをあえてギークっぽくしていて愛らしいしとにかくユーモアにあふれているからその分シリアスなシーン(「お葬式に来て。それから友達でいて」とか)とのギャップが凄い。とにかく喜と哀のコントラストがきれいだった。基本的に明るくふるまっているキャラクターで楽しそうな時は楽しそうであるのだけど、常に哀しみが根っこにありそれがむき出しになったときの破壊力が凄まじい。それから、とにかくよく泣くスコーピウスだった。顔を真っ赤にして涙をぬぐいながらセリフを言っている姿が大変印象に残っています。個人的にスコーピウスがドラコの前で涙をみせていたことが凄く衝撃的で。ドラコ・マルフォイの場合、上級生になればなるほど自分の「弱さ」を外に晒すことを絶対に良しとしなかったはずだから。父親の前で涙を流すなんてもってのほかだっただろうし。だから、スコーピウスがドラコの前で「泣ける」というのは凄いことだなって思って。スコウをそう育てたドラコとアストリアが後ろにいるんだよな。というかマルフォイ親子の関係が常に凄く良かった。ぎこちないながらも親子をしている二人が愛しい。If世界線その②から帰ってきた後の、「アルバス! ハリー!! ……やあ、パパ」「やあスコーピウス」のところとか、過去に飛ばされてしまったアルバスとスコーピウスが無事にハリーたちと再会するところとの「お前もハグをしたかったらしてもいいんだぞ」って言ってしばらくスコウを追いかけるドラコと逃げるスコウとか。ここはアンダーの子がスコウに入ったときはすんなりハグしてたのでジョンくんのスコウはまだドラコとの距離をはかりかねてるんだなと思って好きでした。

ヴォルデモートの手に落ちた世界でも、「ヴォルデモートに栄光あれ」のポーズをあえてゆっくりとやってみせたのは、ドラコなりになにか違和感を感じてスコウにポーズを教える意図もあったのかなと思った。ところで二幕の蠍王の衣装はかっこよすぎてどうかと思う。めちゃめちゃ好き。

一番好きなシーンは”Try my life!”。スコウ好きな人だったら絶対ここの演技は注目してみるよね……。アルと言い争っている間、終始涙目で顔を真っ赤にしていてとにかくつらかった。孤独の表現がうますぎる。体格が大きく(おそらく185㎝くらい)彼の杖とおなじく常に猫背になっているのが背負っているコンプレックスを象徴しているようだった。あと単純に間の取り方とかセリフ回しが上手い。年上のキャストも多い中客席の笑いを一番かっさらっていってた。すごい。彼のスコーピウスを観られたことは財産だなと思う。

 

その他だと大人になったハリーとドラコの関係も見どころのひとつ。歳をへてお互いにお互いにしか見せない面があるのがいい。軽口をガンガン叩くし、かと思えば息子のことで本音を晒すし。ハリーにとってもロンやハーマイオニーに接するのとは違った気の置けなさのようなものが見えるのがいいなと思います。

一幕の二人の決闘のところはわかりやすくテンションあがるポイントです。二人ともめちゃめちゃ活き活きしている。「君練習してただろ!」「老いたかポッター」「君と同じ年です~~」のやり取りの軽快さがいい。ほんとうにこんな感じの言い方だった。それから「君のキッチンを汚してすまない」「私のじゃないわ、ハリーのよ」の後でハリーの方を二度見するのとかも好き。

ドラコがスコウへの感情を打ち明けるのってハリーの前でだけなんですよね。それから「ハリーたちが羨ましかった」というシーンはやっぱりどうしても泣ける。

 

他のところだと、If世界線その①のハーマイオニーのDADA。戯曲と舞台で印象がかなり変わったところだった。教師のハーマイオニーはロンの名前が出た瞬間に涙ぐみはじめたのにはかなり驚いたし最後にPATRONASと書いてある黒板のRONの文字に哀し気に触れているのも胸が詰まった。

 

演出については、専用劇場作らないとどうしようもないな……という部分が多々(だから日本版連れてくるときに専用劇場を置きますってなって納得)。ものすごく目新しい演出があるとかではないんだけど、実際の炎とか巨大なディメンターとか、とにかく潤沢な予算を使って魔法が実際舞台上で繰り広げられるのは楽しい。あれは本当に魔法だ。演出で一番圧倒されるのは何といっても三部ラストの会場全体に文字が浮かび上がるシーン。圧倒される(あそこ頼むから日本ディズニーみたいにダサフォントの日本語が浮かび上がるなんてことにはならないでほしい)。

あとダンス! WandダンスもVマーチもかっこよくて見応えがあって最高です。この2シーンの印象がかなり強かったから、日本版のキャストが発表された時に踊れるメンバー多めだったのは納得でした。

ラストのお墓参りのシーン、ちゃんとお墓に名前が刻んであるのは前方席で観たときに気づいた。リリーやジェームスは勿論、ヘドウィグの名前もありました。あとR.Bの文字も。レギュラス・ブラックか……?って思ったりしたけどまさかね。他にもたくさんお墓があったけれど全部はみえなかったからここは日本版で確認したいところ。

 

あと客席の反応もこの作品ならではだなと……。セブルスの口から「ネビル・ロングボトム」の名前が出た瞬間の客席の空気が凄く印象的だった。「あぁ……」ってめっちゃみんな溜息ついてて、自分の知っている歴史と繋がった感が面白かった。

この演目、観客がハリポタ本編全部知ってるのを前提につくってあるから普通だったら観劇へのハードルめちゃめちゃ高いのにそれでもこんだけ集客できてるのとんでもないコンテンツ力。

 

とりあえず全体的に好きなシーンだらけだから、日本公演は短縮版なのがめちゃめちゃ怖い。どこが削られちゃうんだろう。BWの短縮版のレポは怖くて覗いていないです。折角なら初めましての要素があったほうがきっと面白いしね……。私の観劇は7月なのでそれまでにもう一度戯曲を読みかえそうとおもいます。

宝塚的『理想の夫』ことジェントルライアー 感想

もともとオスカーワイルド原作 “An Ideal Husband”(理想の夫) が大好きなのでとってもとっても楽しみにしてた今作。劇場でみられなかったのは残念だけれど、なんとか幕が開いてこうして配信で楽しめたことが本当にありがたいしよかった。上演を知ったときに、宝塚で理想の夫をやるんなら絶対に主演はアーサーだ!と思ったらその通りだったので嬉しかったです。作中一番かっこいいのはアーサーだもんね。この作品が主役を変えて宝塚歌劇団という場所でどう潤色されるのか物凄く楽しみにしていました。

余談なんだけど、この作品の邦訳書はこれまで絶版になっていて今回の上演でなんと二十二年ぶりに復刊。私は昨年の一時期今作の邦訳書が必要になって血眼になって探していたから、物凄くびっくりしてしまって。あと一年上演が早ければなあなんて思いました。絶版書を復刊させる宝塚パワーが凄い。今後この本が必要になった人は手を伸ばしやすくなるし、『ジェントルライアー』様々。それだけでこの作品が世間に及ぼした影響って大きいです。

 

肝心の作品の話。この作品は女性陣が好きなので女性陣中心の感想になります。

全体的にどちらかというと映画を意識しているのかなというのが最初の印象。特に、ガートルードとチーブリー夫人のお二人。

ガートルードがあんまりにもイメージぴったりで登場した瞬間にびっくりした。清廉で嘘なんて吐いたことがありません、汚い世界のことも知りませんってお顔をしていて、ブロンドの髪と綺麗なブルーのドレスがよく似合っている。勿論お芝居も、潔癖すぎて付け入られる隙のある危うさがあって、まさに私のガートルード像そのもので。だからこそ最後に嘘を吐いたところの面白さが際立っていてよかった。「新しい女」のシーンは正直入らないかなと思っていたので盛り込まれていたのはよかったんだけど演出が……。男性陣の反応があんな感じなのは時代背景を踏まえてもまあ飲み込めるとして、レディ・マークビーが運動に参加したあとに「お恥ずかしいわ。『こんなところ』をみられてしまって」といった台詞があったのが残念だなと思いました。ここ、楽曲がとても好きだっただけに残念。女性参政運動にガートルードが参加しているという点が加わると彼女とミセスチーブリーの対比が増すので入れてくれたのは感謝です。

 

チーブリー夫人はまず原作の描写通り「ヴェネツィア風の赤毛」だったのでにこにこしてしまった。映画はモノクロだからね……。髪型とかドレスとかがかなり映画っぽいなと思った。ガートルードとは違って襟が大きくあいた真っ赤なドレスを着ているのがいいな~ってテンションあがりました。理想の夫の中で彼女が一番お気に入りのキャラクターです。まっとうな方法で政治に関わろうとするガートルードに対し、男を脅して裏から政治を操らんとするチーブリー夫人。狡猾で野心があって女性版ダンディズムを生きる彼女が凄く好きなんだけど、彼女に関しては一番好きなシーンが削られてしまっていたのが残念でした。アーサーの邸宅での駆け引きのところ。本来はアーサーが自力でロバートのために手紙を取り返して、切り札がなくなったチーブリー夫人が「水を取ってきてくださる?」と言って用意してもらっているあいだにガートルードからの手紙を盗むといった流れ。一度切り札を失ってもただでは起きないところ、水はただアーサーの気を逸らしたかっただけなので頼んでおきながら結局飲まないところなど、このシーンに彼女の細かい気質が詰まっていて大好きだったので残念だった……。タイトルにある「ゲーム」という言葉に沿って物語をより分かりやすく盛り上がるポイントを作ったのはわかるんだけど……。ここのアーサーの機転も彼の魅力を深く表しているシーンで好きなんだけどな。それはそうと一枚の手紙をもって二人が対峙するところは照明演出が光っていて「絵の強さ」がよかった。

このへんのこともあってチーブリー夫人のラストシーンも呻いてしまった。自分で手紙を差し出すのか……。でも、ラストの台詞を聴いて少し納得した。彼女はまだアーサーに情が残っている「ローラ」なんだなって思って。

この辺りは私が面倒な原作ファンかましているだけでお芝居も作品を俯瞰でみたときのバランスもめちゃめちゃよかったです。紫りらさん、代役だなんて信じられないくらい見事にチーブリー夫人を演じていらして素晴らしかったです。特に、ガートルードの手紙を読み上げるシーン。拍手しそうになった。アーサーが読んだ時はなんてことのない手紙なのにチーブリー夫人の声で読まれると途端に邪に感じて、そう、こういう人だよねって。チーブリー夫人がチーブリー夫人たる所以の表現が最高。一幕の終わり、アーサーではなくてロバートの方をみているのも好きです。獲物を狙う蛇みたいで。

「もうローラとは呼んでくださらないの?」「その呼び方は嫌いだから」「昔は好きだったくせに」「だから嫌いなんだ」のやり取りがしっかり入ってたのも嬉しかったです……!この短いやりとりで二人の過去の関係を表すオスカー・ワイルドの台詞選びの気取った感じだ大好きで、ここめっちゃテンションあがった。本来はもっと後半でするやりとりだけど序盤にいれることで二人の関係をきっちり匂わせていくのは潤色が上手いなと思った。

 

あと、メイベルが超かわいくって……! 正ヒロインだよ……!! ずっとヒロイン誰にするんだろう問題は気になってたけどやっぱりメイベルだよね……! 約束をすっぽかされる下りを前半にいれることによってこの二人の関係構築もしっかりしていくので、描き方がやっぱりうまいって唸ってしまった。原作だと、メイベルがアーサーのことを好きなのはロンドン中に知れ渡っていて、なんとなくアーサーもメイベルに惹かれているというのは周知の事実っぽい、みたいな文章はあるんだけどメインがロバートとガートルード周辺のごちゃごちゃだからこの辺全然描かれないんですよね。それがアーサー視点になることでしっかりこの二人にスポットがあたっててよかった~! 本当にかわいかった。それから映画よりもしっかり者の印象を受けた。義理のお姉ちゃんとは違って清濁併せ吞む器量のありそうなメイベル。トミーとのやり取りもかわいくって。というかトミーがかわいくって。メイベルとトミーのシーンはひたすらに微笑ましくて好きでした。

 

この三人の女性とアーサーの関係を全部しっかり描いた上でさばききっていて面白かった。アーサーがむかしガートルードのことを好きだったって設定には少しびっくりしたかも。原作を読んだらそうとも読めるみたいなニュアンスのところだったから。

 

ずっと女性陣のことばかり書いたけど、もちろんアーサーも超かっこよかったし、あとはキャバシャム卿が笑わせてくれるところきっちり笑わせてくれて、いい味を出しているなと思いました。アナスタシアを観たときも思ったけど、主人公を変えたアナザーストーリー作るのがめっちゃうまいですね宝塚。理想の夫が実際に舞台でみれる日が来るとは思っていなかったので(配信だけど)とっても楽しかったです。

ミュージカル『ヴェラキッカ』感想

ヴェラキッカ大千秋楽おめでとうございます。

1年以上の期間を開けての久しぶりのTRUMPシリーズの感想。ふせったーとかツイートとか、いろいろなところに散らばっていたから一旦纏めつつ追記してたら13,000字になってウケてる。千秋楽配信が一週間後なので見た後に何か追記するかもしれないけどひとまず。

観劇してるのは東京公演のみ。初日、19日、22日マチソワ+配信18日、22日ソワレ。最初3回くらいで満足するかな~と思っていたけど結局チケット増えたし配信も3回中2回はみました。千秋楽のやつも買うつもり。

思ったよりも長くなってしまったのでチャプター分けをした。作品全体の話と、カイくんの話と、キャストさんの話。

 

  • 作品の話

 

今回個人的にストーリー自体はそんなに嵌らなくって。曲とキャラクターに凄く嵌って劇場に行っていた感じ。偶像を愛すること、その行為で現実の辛さから逃れることを許容してくれる物語だから、その点は凄く好きなんだけれど。

TRUMPシリーズにしては珍しいスルメ型の作品だなと思った。後から噛みしめて面白さがじわじわ来るタイプ。気付いたら深みにいてチケットが増えている。私の話です。

これまでの作品って、観劇中にガツンと頭を殴られるような衝撃がきて、終わった後うわぁ~っ!!!ってなるような作品が多かった印象だけどこれは観劇後延々と考えちゃうタイプの作品。観劇直後は私はそこまで衝撃は来なかったんだけど、終わってからあそこってどうだったのかなとかあの役はどんなことを考えてたのかなとかひたすら思考し続けてしまう。あと劇場でみてこその舞台だなとも思いました。劇場空間で、一緒に共同幻想のなかに入り込むことを前提としてつくられた作品なのかなって。今回私は劇場で涙がでてこなかったし、周囲で泣いてる人のフックがよくわかんなくて首を捻っていたのだけど、その話をフォロワーさんにしたら「(泣いているお客さんは)共同幻想に取り込まれたんだよみんな」って言っていて凄く腑に落ちた。と同時に私はあの幻想の中に入ることができなかったんだなとも思いました。

 

なんだかお話のことを考えるとどうしても「それでいいの?」って思ってしまう。

初日に観終わったあとはかなりもやもやっとしたものが胸に残った。繭星のダリちゃんを観たときのもやもやに似ている。生者による死者の語り直しへの薄気味の悪さというか。この話の発端にしたって、ノラの願いが叶っているのではなくてシオンの願いが叶っているんだよね。ノラはもういないから願いは叶えようもなくて、幻想のノラはあくまで幻想のノラであるからシオンが愛したノラではなくて。ノラのためじゃなくて罪を償いたい彼等のエゴ。「みっつの罪悪感」の「この罪悪感を抱え生きていくしかないのか」って歌詞にいつも「そうだよ」って思ってました。歌の中ではいいやだめだそんなことは許されない、って続くけれど、生きているあいだになにもできなかったのならそれを引き摺って生きていくことしかできないんだよって。ノラのことに関しては、正直彼等の「罪」ではないと私は思うんだけど、それを罪ととらえずにいられないところも何らかの形で「償い」をしたいとと思うことも、全て彼等のなかでだけ完結している。

あとこれは完全に余談なんだけど、この曲どうにもタイタニックのThe Blameが重なる。男性三人のナンバーってとこくらいしか一致してないけど。あと三角形になって歌ってるとこ。The Blameがめっちゃ好きなのでバフがかかってこのナンバーも好きです。

閑話休題。そういうのも踏まえて、最後のカイくんの行動を復讐ととらえる感想をみて私はびっくりしてしまった。あれは全て優しさと善意からなる行動だと思う。少なくともカイくんにとって共同幻想は罪悪感からの解放だったから……。あの行動が「善意」であること自体がやっぱり薄気味悪いのだけど。あと、結局カイくんもシオンにイニシアチブ取られているから行動の全部が自発的なものなのかどうか信じきれないのも余白だな~と思いつつカイくんの意思かなと思います。このタダじゃ終わんない感じがいかにもTRUMPシリーズって感じはする。人間愛『奇』劇。

他にもなんでこうしなかったんだろうとかああすればよかったのにとかそういうポイントは沢山あって、でも舞台上で起こらなかったことに私たちが何かすることはできないし何かを言う権利すらないんだよな〜みたいなことをずっと考えてた。客席の私たちがどうこう言うのは簡単だけど、そうはならなかったし、舞台上で起こったことがすべてなんだよな……。シオンが取った行動も、最後にカイがシオンを幻想に還したのも、シオンがそれを受容したのも、本人たちがそれでいいならいんだもう……。シオンが幸せなら私たちが何か言うことはないのよ……。

だから初日はすっごいもやもやしたまま帰ったんだけど、「これはこういう話なんだ!」って開き直っちゃうとめちゃめちゃ楽しくなった。あ~あ!愚か愚か!って思いながら最高の曲を浴びて帰る。楽しい。

 

「実体のないノラ」の魅力をあれだけの説得力を持って描き切ったのは演劇の底力を感じて物凄く好き。脚本衣装照明舞台装置全部使って「愛されるためだけの存在」のノラを「愛さずにはいられない」と思わせる力が凄い。なによりノラを演じる美弥るりかさんのお力あってこそですね。髪色も含めてお色直しがたくさんあるから、一幕のラストの時点でこのノラも共同幻想の一部なんだろうな(そしてみんなのイニシアチブとってんのはシオンなんだろうな)というのは予想がついてしまうのだけど、どの姿のノラであっても本当に素敵で魅力的で素晴らしかった。発声は男役の声の出し方で、見た目も全然性別がわからなくなってて。性別不詳、年齢不詳でノラを演じきってくださった美弥るりかさん最高だった。

ノラの性別について結局最後まで言及されないのは、「誰もノラの本当の性別を知らなかったから」なのかな。人によって男性にみえてるか女性にみえてるかも違うんだろうな。ダンスシーンだと、キャンディと踊る時は男性パートを、カイと踊る時は女性パートを踊っていたし。その人にとっての見たい姿、愛したい姿、理想の姿にみえていそう。この性別を断定させないまま話を全部やるの、HeとかSheに置き換える必要がない日本語の強みを生かした脚本でいいなって思う。

現実のノラの性別については考えるだけ野暮なのだろうけど、それをわかったうえで言及すると男性かなと思った。TRUMPシリーズの家父長制ややきつめの世界観のなかで「女性当主」がありうるのかと思うと微妙……。ヴェラキッカ家がそういう風潮に抗っている家系っぽいのを鑑みても、もし女性だったらカイくんの母親はノラを地下牢に閉じ込めるなんて面倒なことをせずさっさとどこかへ嫁に出して仕舞えば済む話だしなあ……。シオンがヘテロセクシャルだったから幻想のノラは女性ベースだったのかもしれない。

 

末満さんが「そういうものを目指した」と言っていただけあって単体で楽しめる度が高い作品なのも好きポイントです。他のシリーズとの関連が低いから気軽に勧めやすいし私たちもフラットな気持ちで観れるし。シンプルでいい。

そのうえでシリーズ追ってきてるオタクには音楽によるバフがかかるのがおもしれ~と思いました。愛という名の呪いが流れたときはマジでここで流すな~~!!!!ってキレた。ノラが愛されたいって言ったタイミングで流すか? シオンに呪いかかっちゃったじゃんよ~~。曲名を踏まえるとシオンは最後まで呪いがとけなかったんだなあ……。

ノラの「愛されたい」で愛という名の呪い流してその言葉を思い出すシーンの「愛されたかった」でライネスなの本当に最悪。BGMひとつでここまで最悪にできるのはこれまでのシリーズの積み重ねだし演劇のギミックとしては凄いよねみたいな話をフォロワーさんとしました。

それからリリウム再演のお知らせが直前に会ったのも相まって、リリウムのアンチテーゼというか、重なる部分があるからこそ違うところが際立つと感じたところがあった。ノラの言葉が共同幻想の切欠になってしまうところとかウルの言葉引き摺って共同幻想つくっちゃったソフィさんだし。「共同幻想のなかで誰かを愛せるのか」(ニュアンス)みたいなところ、リリウムの共同幻想でつくりだした少女を「愛しているんだ!」と叫ぶソフィさんがちらついた。けれどシオンの作り出した共同幻想は皆に受け入れられているし、シオンは最後まで幻想のなかで幻想のノラと寄り添っているんですよね。対して結局少女たちを失った後「まあいいか」となってしまって孤独に戻ったソフィさん。ソフィさん……。


あと本当に曲が好き。ミュージカルにおける楽曲の力を思い知らされた。曲聞きたくて劇場に行ってた。聞けば聞くほどリズムも音程もとりにくそうで歌いにくそうな曲ばっかり。和田氏を日本のスティーヴン・ソンドハイムと称したフォロワーさんがいて笑っちゃった。言い得て妙。

曲がすっごいよかったからこそ、ブリリアだったのがほんっっっっとうに残念で。私は今回ブリリアとは初対戦だったんだけど(アンマスクドはKAATに避難したので)あそこマジでミュージカルやっていい劇場じゃない。一階前方と後方でマチソワしたとき劇場変わった?ってくらい聞こえ方違って本当にびっくりした。同じ曲を聴いても別の曲みたいに聞こえる。前評判の通り、群唱になればなるほどだめですね。初日とかヴェラキッカの一族のところでいきなりコーラスがわちゃわちゃになってたし、ハモリの下のパートがガンガン死ぬ。折角いい曲ばかりなのに……。曲をちゃんとした音で届けられないって劇場として致命的だよ……。TRUMPシリーズ、日生でできるくらいデカくなってくれ~~~~~!!!!

 

  • カイ・ヴェラキッカの話

カイ・ヴェラキッカくんについて。私が増やすつもりのなかったチケットを増やしたのはだいたい彼が原因である。

なにせ、TRUMPシリーズで初めて推しが生き残った。黑世界ですら推し*1が死んで行ってしまった私の推しがとうとう生き残った。厳密にいうと一応繭月*2も作品終了時点では生き残ってるんだけどマチネで生き残ってもソワレで燃えてたからノーカンにして欲しい。
カイくんは出てきた瞬間にああこの子は好きそうだな……と思ったのですが案の定でしたね……。末満さんの書くあの手のキャラクターにあまりに弱すぎるんだよなあ私は……。

 

とりあえず最初の感想はひたすら「可愛い」でした。いろんなところが可愛い。
まず衣装がかわいい。ダンス映えするひらひらで素敵。……って意味で可愛いって言ってたのに、フォロワーさんに床に這いつくばってるのが映える衣装で可愛いよねって言われてそんなつもりでは……となった。そこも可愛いんだけど。
ミュージカルである以上仕方がないのだけれどどれだけツンツンしていようと曲が始まればみんなと一緒にバキバキにダンスしてくれるところがとっても好きです。しかもめちゃめちゃダンスが上手い。最初のセリフが「やれやれだな」なのに直後めちゃめちゃ踊り出すの好きだし♪ヴェ~ラキッカ ジャン! でビシッてポーズとった直後すぐフンッって顔するのも好きです。22日ソワレヴェラキッカの一族の「全く!」のまえ、親指の腹で顎を擦りながら苛立ちで全身が揺れてて、それがリズム取ってるみたくみえたのも可愛かった 。


それから毎回楽しみにしていた「見下してる!」のところとシオンとのやりとり。
ここで必死に背伸びするカイくん、最初気付いたとき可愛すぎてひっくり返った。最後イニシアチブ取りに行く時も背伸びしている。あそこそんな場合じゃないのに可愛い~の気持ちでいっぱいになってしまうのでダメ。

東京後半から見下してる!のあと一回剥がされてももう一回トライするようになってたし、22のソワレなんか、いつもは精一杯背伸びしていなされて終わりなのに、シオンに先に手を突っ張られて背伸びすら出来てなかった!かわいい〜!そのあともう一回シオンの目の前まで向かってってイーッて威嚇してたかわいいね。
ところで、カイがシオンを見下しているように感じているのはシオンが無意識に母親を重ねてたまに嫌悪を見せているからとかだろうか。「先代の母君が見たら〜」みたいなセリフは最後まで見るととんでもない皮肉。まあ、「血筋で優遇されているに過ぎない」は一々言われなくてもわかっている事だろうし、そもそも家に引き取られた事実自体そうだし、皮肉も言いたくなるよね……。

初めて喋った瞬間を知ってるシオンからの「立派になったもんだ」はガチだよな。ノラとカイとシオンとジョー年齢差どうなってんだろう。シオンとカイは7~8歳差かな~と思うのですが、ジョーは引き取られた時幾つくらいだったのかな。カイくんがこの中で一番年下なのを踏まえてシオン、ジョー、カイのやりとりをみると全部可愛くて仕方なくなる。年齢差はかなり可愛いポイントですよ……。シオン・カイ・ジョーの幼馴染トリオの会話がもっと見たいよ~~!!

あとノラに「昔から!昔からっ……!」って台詞から続きを言えなくなってしまうのも可愛いな~~~と思って観ていたらゴリゴリに伏線だったので恐れ入った。カイのキャラクター的にノラの前でうまく言葉が出てこずに言い淀んでしまっているのだと思っていた……。キャラクター造形をうまく物語に取り込むのが超うまいな……。

愛の家訓の前、ノラに口元に手を添えられて(……!)ってなってるのもキュートだよ……。別に家族愛もあるんだし、弟なことと愛してることは矛盾しないんじゃないか? って思うんだけど共同幻想の主が抱いてるのが恋心だから無意識に恋愛的要素を含んだ愛を捧げるようにできているんですかね。ロビンとノラのやり取りを見てもそんな感じだったし、それならジョーがカイへの気持ちとノラへの気持ちを両立できず苦しんでいたのもわかる。

「Welcome to the Verachicca」の前にシオンに肩ガクガク揺すられてリズムとらされてるのもめちゃめちゃ好きです。ここ日に日に激しくなってって、最後の方カイくん全然首座ってなくて笑っちゃった。赤ちゃん。曲中のカイくんパートの振り付けの階段登るの?登らないの?みたいな動きも好きだし歌詞もツンツンしてて可愛いです。背中合わせで踊る所も、すごいゲンナリした顔でいやいや踊ってる感じがすっごい好きです。

あとジョーにキスされたときの反応もめっちゃ可愛い!!キスされた後、東京前半は拭うみたいに軽く唇に触るだけだったのに22日はノラが出てくるまで(なんだったんだ……)みたいな感じでずっと指で唇なぞってて大変キュートでした。あとギブギブ!みたいな感じでジョーの背中バンバンしてたのも好き……。日増しに可愛くなっていく……。 キスされてる時も当たり前に可愛いけど「気に入らないのよあなたのその態度〜」あたりの動きも言われてることが図星の自覚はあるのかぎゅって顔のパーツが全部真ん中に寄っていて可愛い……拳が震えているのも好き……。それから、キスされた時咄嗟にジョーの腰に手を回すところは育ちが出ていて好きです。終盤うわぁぁぁぁんっ!!ってなったウィンターもひしって抱きとめてあげていたので動作が身に沁みついているんですね。

Absolute fateは表情がどんどん移ろっていくのが素敵でずっとカイくんの方を見てました……。夢が醒めかけているのにノラに幻想に引き戻されて表情が段々虚になっていくのが超好き。あとノラから逃れようとして床を這っているのもいいですね。


二幕のカイくんは愚かポイントをバンバン稼いでていっそ楽しくなってくる。今回の作品、悲劇性はそんなに高くないけど愚か度はシリーズのなかでもかなり高いように思います……。

カイくんは、これまでシリーズに登場してきた貴族たちに比べればかなり人の心があるというか、「いいひと」なんだけどだからこそ貴族としては格が落ちるな……と思ってみていた。潔癖すぎる。自分のために犠牲にされた命があるという事実に対して、「それを知った以上ヴェラキッカの当主ではいられない」という反応になってしまうのが成熟しきっていないなって。ヴェラキッカの当主である以上、少なくともその時点でいろんなものを踏み躙ってそこに立っているはずなんですよね。それこそ、シオンとかはカイの存在によってかなり割りを食っていたと思うのに、それに対してきっと無自覚なあたりどうにも幼い。自分が与えられた地位や権力をあまり正確に認識していないように感じる。ノラを知っていたというシオンに「羨ましい」という言葉を投げるのだってかなり無神経だよなあ……。多分ここで「ノラのことを背負ったままヴェラキッカの当主として生きていく」という決断ができればシオンもあんな行動には出なかったのに。ライネスは、やらかしたのはシオンだけどトリガーはカイくんだもんな……。「言葉は聞いたんだろう!」が完全にシオンのトリガーになってる。噛まれる直前の台詞が「ノラは救われるのか?」じゃなくって「それで僕の罪は許されるのか?」なのが超愚かポイント高いよ~~。このままではヴェラキッカの当主ではいられないから自分の罪の清算をしたいんだよね。真実を自分で問い質しておきながらそれに耐えられなくなってヴェラキッカ当主の座から逃げようとするあたりが弱いし幼い……。

ただここで咄嗟に出た言葉が「羨ましい」だったのって、カイも本質的に孤独だったからじゃないかと思った。カイくんの母親の人物像は我々には知りえないものだけれど多分カイくんの受け取っていた愛情は「ヴェラキッカ家の当主」としての屈折したものだっただろうし。母親以外に血を分けた「年上のキョウダイ」がいたことはカイくんにとってほんの少しの希望だったんじゃないだろうか。だからカイの目の前に現れたノラは「ステレオタイプ的な貴族」の姿をしていたのかなと思います。ノラの姿は皆それぞれに自分の欲しかった愛情の形をしていたのかなと思ったりもする。みんながノラを愛するのはイニシアチブによるものでもあるけれど、自分の求める愛情の姿かたちをしているのであれば愛するのは当然なのかも。

そうなるとカイくんの母親像がなかなか謎になってくる。どういうひとだったんだろう。カイくんの前ではいい母親だったりしたんだろうか。今回カイくんの母親がどんな人物だったのかっていうのは全然語られないんですよね。「権威主義的」で屋敷の支配者として振舞っていたとしか。まあほとんど舞台機構的な登場の仕方だし、殆ど掘り下げがないのもわかるんだけど、前述の「貴族としての在り方」のようなものをカイくんに教えなかったのか?っていうのがとても疑問で。教育関係は乳母とか家庭教師に任せて自分はかかわってなかったのかな……。息子すら支配の道具としか思っていなかったのだろうか。あのTRUMPシリーズの世界で「女性当主」というのがどうにも想像しにくいからカイくんの母親はどれだけ権力を持とうと「当主代理」的な立ち位置にしかなれなかったんかな。だとすれば息子を正式に当主にして名実ともにヴェラキッカ家の最高権力者になろうとしたとか? そうもくろんでいたけれども自分の想定よりも早く体にガタがきちゃったみたいな。それだったらあまり息子を顧みなかったのも頷けるけれど。

というか、カイくんって生まれてすぐに父親は死んでいるしヴェラキッカが他と交流していなくて周囲に同階級の人間もいないから貴族としてのロールモデルがなかったのか。特級貴族が全体で何人いるかはわからないけど同じクランに特級が何人もいる状態ってそうそうないだろうしな……。

物語が終わった後、再びカイくんが当主の座にもどるのであれば、今度はきちんと踏みしめているものを理解したうえでヴェラキッカの荘園という小さな国を継いで欲しいなあ……。シオンに噛まれてシオンを噛んで、人間の一番柔らかいところを操る重たさとか責任も背負って、ヴェラキッカの当主としてあって欲しいなと思います。これは完全に願望だけれど。でも、「ヴェラキッカの街」が続いているのならそれなりにうまくやっているのかな。そうだといいな。

 

  • キャストさんの話

今回(というか今回も)脚本も曲もかなり宛書きされていたから「このキャスト陣」じゃないと出来ない作品だなというのを強く感じた。キャスティングを前提にしてつくってある作品というか、キャストが先にあって、その人がこの曲を歌うことを前提に曲が書いてあるというか。あまり再演を前提としていない。ミュージカルを書くときに再演を前提としないのって結構変わってる気がします。

 

美弥るりかさん

この作品に必要不可欠すぎて、作品の感想と美弥さんの感想を切り離すことがどうしても不可能なのであまりここに書くことがない。末満さんが美弥さんがいないと全然違う話になっていたと思うみたいなことをおっしゃっていたのが凄いわかる。美弥るりかさんあってこその舞台なので、この舞台の感想そのものが全部美弥さんに向くな……と思います。立ち姿も踊っている姿も全部美しくて思わずオペラグラスを奪われてしまう魅力があって本当に本当に素敵でした。ノラが完全に美弥さんへのあてがきだから、今後ほかの作品に出ているところはみたいけれど、TRUMPシリーズではもうノラ以外を演じて欲しくないって思ってしまった。

 

平野綾さん

まさかこんなところで初演のセリフの伏線回収があるとは思いませんでした。ハルヒ。初演映像を公開してくれたのはこういうことだったのすえみつさん!!!

今やミュージカル女優さんとして大活躍されているあーや!最後に拝見したのは……エニゴ結局みれなかったから、ブロ銃(初演)!?嘘でしょ!?ブロ銃ほぼ記憶がないから実質ベス(再演)ぶりになっちゃうんだが……。さすがに嘘でした。直近はレベッカのイヒですね。それでもだいぶ前だな……。硬柔自在なお歌とお芝居を見せてくださる印象です。コンスタンツェみれてないのがほんとうに惜しい……。

登場した瞬間にかわいい!と心を奪われました。一挙一動がかわいいキャンディ。ヴェラキッカダンスでワンピースの裾を持ち上げて踊っているのが素敵でした。「少女」を演じるのがうますぎる……繭期を抜けたばかりの女の子であることに全くなんの違和感も感じないのが凄い。それからTRUMPシリーズ作品と声の相性がとんでもなくいい。本当に夢のなかにいるかのようなうっとりとした声から、「えいえん」という言葉を発するときに少し不穏なニュアンスを持たせるのがすごく好きでゾクゾクした。このシリーズにおける永遠という単語への危うさが滲み出ている。可愛らしい声だけじゃなくて迫力のある力強い歌声が出せるのも素晴らしいです。「この愛は毒だ」のキャンディのソロが入ってくるところはメロディも相まって、ヴェラキッカ家に新しく入ったキャンディという存在の異質さ、あるいは特別さを表すようで毎度鳥肌が立つ。それから「嘘の真実」は凄まじいことさせられてんな!!と思ってました。あの曲えげつなさすぎる。全部アカペラて。平野さんの歌声とアンサンブルさんの正確無比な音感で持っている曲。すげえ~~~。あと今回ブリリアでどこ座ってもはっきり声が届いてきた役者さんの一人だったのでそのへんもさすがだ~~と思いました。

出演してくださってありがとうございますの気持ちでいっぱい。欲を出すなら別なタイプの役でも拝見したさがとてもとてもあるのでぜひ再度出演してほしい!!!

 

斎藤瑠希ちゃん

初舞台!?嘘でしょ!?初舞台!?!?!?年齢調べたら19歳で声でちゃった。逸材すぎる。

歌声の通り方が初舞台のそれではない。はっきり客席にまで届いてくる歌声で、とても好きです。お芝居も上手。最高ですね。マギーちゃん、あえてそういうキャラクター造形をしていたの思うのだけれど下の名前が出るまで特級貴族家出身だというのを一切思わせないお芝居で、あのシーンの衝撃が増すのがうまいな~って唸ってしまった。ベテラン繭期のしょうちゃんに一切押されてないのが凄い。あの二人のコンビ可愛かったし最高だった。本来なら混ざらない階級の二人が「マブ」になってんのもあの共同幻想がもたらしたものだな~って嬉しくなる。

「愛は殺意」とか声伸ばすところ超音程取りづらそうなのに完璧に歌い上げていて毎回サイコ~~って思って聞いてました。

今後もっともっとたくさんのミュージカルでみたいです!リリウムの再演にも出て欲しい!!!ミラベルまだみれてないけどD+で配信してるっぽいから早くみよ。

 

大久保祥太郎氏

プロ繭期の方。さすがシリーズ最多出演。見るたびにメキメキ実力がついてて強すぎる。

今回、若手陣のなかだと圧倒的に「芝居歌」がうまいなと思いました。末満さんのつくるミュージカルってどっちかというと歌は歌!芝居は芝居!みたいな感じで、急に歌うなと思う箇所が多々あるのだけどそのなかでもきっちり歌を芝居に落とし込んでいてそこが好きだった。特に今回、シオン役の松下さんとカイ役の古屋さんが完全に歌を歌として歌うタイプの人だったので歌を芝居にできるしょうちゃんがより光っていたように感じます。

周囲の人間が噛まれたあとの「なにやってんだよ!」はちょっと笑っちゃったけど。前も全くおんなじセリフ聞いてるんよ。

どんどんいろんなミュージカルに出てるから今後拝見する機会が増えそうで嬉しい。お芝居もお歌も強いから毛色の違う色んな役をみたいです。

 

松下優也さん

ジャックぶり!今回のキャストさんの中だと直近で拝見してる作品が一番新しい方でした。アンダーソン本当に本当によかったので今回も拝見できるのをとっても楽しみにしてた。

めちゃめちゃ好きでした。特に「小さな恋」は直前にシオンが語った自身のなかの自己矛盾ごと現れて、ロマンティックな曲なのに苦しげだし切なさが滲んていて素敵だった。それから複数回観劇すると一度目とそれ以降で一番印象が変わる役ですね。二度目はシオンに注視していた人が多いんじゃないだろうか。一番最初の登場曲でみんなの視線を追うようにさまよわせていたり、キャンディのパーティの前の「カイ、シオン」というノラの呼びかけにぽかんとした顔をしていたり、二回目で気が付く細かい芝居が多い!!! 一体あの共同幻想が何年続いていたのかは私達には知ることができませんが(とはいえそう長い期間ではなさそう)、その期間「ノラがみえていない」ということを露呈させずに立ち回れていたのだろうなと私達が納得してしまえる優秀さに説得力をもたせられるのも凄いです。致命的なミスがあったらイニシアチブでなんとかしてたのかもしれないけどあんまりそういうことしなさそう、というか最初の命令以外にイニシアチブ使わなさそうだし。ソフィさんと違って……。シオンの無差別大量口咬シーンは普通にしんどそうでこっちもしんどいんだけど狂乱前のアンジェリコ様もあんなかんじだったのかなと思うともっと苦しくなった。

あとちょいちょいあざとい所作が多くてオメー……ってなってた。小さい頃から自分が「かわいい」という自覚のあるキャラ造形のシオン・ヴェラキッカ、なんなんだ……。実際シオンって後妻が健康だったころは全然立場弱かっただろうから、屋敷の中に味方を増やす意味で人好きのする挙動が増えたのかもと思います。アンダーソンの時と同じくひとの「中身」のところの柔らかい部分を見せるお芝居が凄く似合うし上手。シオンは台詞だけを抜き出すと結構乱暴な物言いをしているんだけど、松下さんのお芝居であの優しくてそれゆえに苦しそうなシオンが出来上がっている。凄く魅力的な造形になっているなと思います。

今になってめちゃめちゃサンセット大通り観れてないのが悔しくなってきた……アンダーソンもシオンも上部だけは取り繕いながらなかみのくちゃくちゃになってるところをみせてくれるのがよかったからジョー(サンセットの方)も絶対よかったよね……………松下さんの声でサンセットブルーバード超聞きたいからもっかいやってくれ~~!!!

カテコダンスを虚無の表情で踊ってたのが怖かったんだけど、あれは演出なのかご本人の役が抜けてなかったのかどっちだろう。

 

古屋敬多さん

完全にはじめましての方です!マドモに出演されてたんですよね。ブリリア経験者。

今回古屋さんの役にハマるとは一切思わず観に行ったのでダークホースでした。カイくんを只不器用なだけでなく愛されるふうに演じてくださってありがとうございます。

なんといってもダンスが素敵だなって思いました。お手本のような正確無比なダンスをされるので、それがカイくんの気質にぴったりで素敵です。最初に拝見した時からダンスナンバーでは自然と目で追ってしまっていた。

発声がミュージカル発声じゃないからちょっと声になれるのには時間かかったかも。1789のときのりょんくんもそんな感じだった。特にソロナンバーの「言葉ではたりない」については、おそらくご本人のお声とブリリアの相性が良くないんだと思うんだけど、初日は歌詞がぜんっぜん聞き取れなくてこまった。翌週にだいたい同じくらいの席に座ったらだいぶ聞こえるようになってたので音響改善してくれてたのかな。このソロナンバーは完全に「再演を前提としない完全な古屋敬多氏への宛て書き」という感じがしてテンションあがりますね。ミュージカルナンバーのつくりじゃないもん。急に英語入ってくるし。「愛を歌い上げないのが反対にカイらしい」という和田さんの曲作りのお話をきいてありがとうございます……のきもちでいっぱいになりました。古屋さんの少しハスキーなお声も相まって、本心をなかなか口にできない、ノラが死んでしまってからようやっと「愛していた」って言葉に出来るカイくんにぴったりな楽曲になっているなと思う。

 

愛加あゆさん

実は拝見するのがマリゴぶりです。その前はブロ銃。あーやと同じくエニゴで観る予定だったのにな~~の方です。公演中止なのでどうしようもないけれどいま改めてみときたかったなあ……が募る。エニゴ……。

観るたびお歌がパワーアップしていきますね。「この愛は毒だ」でえげつない高音を担当させられていてびっくりしてしまったし、初日、「愛して、愛して、愛して」のところの最高音が「愛加あゆの声」としてはっきり客席に届いてきて凄かった。

ジョー本当に可愛くて……あゆっちが演じるTRUMPシリーズの役はみんな好きなんだけどジョーも例にもれず大好き。「裏腹の水掛け論」の最後、あなたのことが……で声を震わせるのが可愛くて、素敵ですね……。あと今回も噛まれるんかなって思ってみてたら案の定噛まれたので笑ってしまった。脅威の噛まれ率100%。

ぜひとも今後もTRUMPシリーズと末永くよろしくお願いしたいです。末満さんと和田さんが離さないと思うけど。

 

宮川浩さん

毎度毎度歌で殴ってくださるので今回もお歌に関しては流石のひとことなんですけれど今回お芝居が凄くよかったな~~~って思いました。登場人物みんな愚かだけどロビン特に愚かで、宮川さんのお芝居でそれが光っていた。シオンに「噛んでくれ」って懇願するシーンとかめちゃめちゃ愚かでテンションあがりました。

あと「みっつの罪悪感」も、楽曲とお芝居の両方で聴かせてくれる感じで凄くよかった。あの曲宮川さんのお歌で凄くバランスが良くなっていて好きです。あの曲凄い好き。松下さんのお声も古屋さんのお声も甘い声ををしているから宮川さんの重たい声が重なることで曲の深さ一気に増して素敵です。その辺含めてThe Blameぽいっておもったんかなあの曲。

 

西野誠さん

マリーゴールドの時よりも声の伸び方が増していて「まだうまくなるんだ!?!?!?!」って衝撃が来ました。もともとあんなにうまいのに伸びしろがあるの恐ろしい。やっぱり四季在団時からボーカルキャプテンを担当されていたり、いろいろなところで歌唱指導担当をされていたりするだけあって、和田さんのつくるえげつないリズムの曲を見事に歌い熟されているの強いなあと……。身の程ソングあんなに気持ちよく歌い上げてるけど冷静になって聴くと超リズム取りにくそうだし歌いにくそう。

西野さん出て来るだけで舞台が華やぐし面白くなるし大好きです。早く繭期大夜会で「身の程を知れ小娘!」のコーレスができる世界になって欲しいよ。

 

 

今回、いろんな人の感想読んでいるといつも以上に感想も受け取り方も人によってばらけていて凄い面白いです。どこで泣いてるかとか誰にキレてるかとかも全然違う。これだから楽しいよな~~って思います。

とりあえず目下の悩みは千秋楽配信用にiPadを購入するか否か。折角ならスマホじゃなくて大きい画面でみたいし、これを機に買ってしまおうかな……。

*1:それぞれアイダとノク

*2:言わずもがなアンジェリコ

潤色作品としては好き―ミュージカル版韓国Equalレポ感想

韓国のミュージカルEqualの初日(12/31)と1/2の二回分をみたのでその感想です!

最初の方は作品構成とかの話ですがほぼネタバレしながら話すのでご注意ください。

 

そもそも演目自体が大好きなやつだし、以前から友人とEqualは絶対にミュージカル映えするからミュージカル化してほしい。できれば韓国でしてほしいという話をしていたので、発表時から大変楽しみにしていた作品です。二人ミュージカルの演出に強い韓国。

私のEqual鑑賞歴は以下のような感じ。

赤坂版▷観劇三昧で映像を鑑賞

ワタナベ版▷DVDを鑑賞

朗読劇版▷2ペア(小林・田中/植田・松井)配信 2ペア(染谷・細貝/碓井・納谷)劇場で鑑賞

女性版▷今月下旬に劇場で鑑賞予定

京都Equalはレポだけ読んで「怖」って言った。韓国のストプレ版は写真だけ漁ってた。こうして書きだすとEqualっていっぱい上演されてますね。

 

作品全体としてはEqualそのもののミュージカル化というよりもEqualという戯曲を読んでそこから受け取った解釈のひとつをミュージカルにした印象。かなり大胆にがっつり潤色してある。わかりやすく言うとEqualの二次創作っぽかった。

楽曲数はリプライズ込みで15曲。同じく二人ミュージカルでだいたいおんなじくらいの上演時間のスリル・ミーが18曲ストーリー・オブ・マイ・ライフが17曲なので妥当な曲数かなと思います。結構一曲が長いのあったしね。

再構成に当たって時代設定・舞台設定がはっきりと再定義されていたのはかなり良かった。原作Equal、良くも悪くもそのへんふわふわしているので。特に舞台がヨーロッパっぽいのに聖書のくだりで「昔本で読んだことがある」なのはまずいだろと思っていたからさすがにその部分はちゃんとしてた。

 

冒頭の映像面白かったですね。時代背景が一発でわかるのでいい。

各曜日に英語のサブタイトルがついているのですが、それが各章のメインナンバーの名前のようですね。章タイトルがでるのはSOML*1っぽいなって思った。

 

月曜日「cause I know you」

ニコラが待つ家にテオが返ってくる所からスタート。テオがペストマスク被ってるの、17世紀ヨーロッパなのが手っ取り早くわかるしかっこいいしいいじゃん~って思ってたら後半での伏線としての働き方が良すぎて素晴らしかった。あの町結構田舎っぽいから誰か知らないひと(あるいは死んだはずの人間と同じ顔をしているひと)がいたらすぐに露呈しそうだけど、マスクのお陰でばれない。面白い。

M1は開幕直後割とすぐにスタートします。このM1が月曜の表題曲っぽい。「君を知っている僕僕を知っている君」みたいな歌詞がありました。月曜はこの曲とそのあとの短めの芝居のみでかなりサクっと終わる。M1がかなり長いんだよねボイパ(?)っぽいのもしてるし。あそこはアイドルさんの方のキャストだとさらに映えそうだからそっちのキャストさんでもみてみたい。この曲は「君がいるから頑張れる/君がいるから寂しくない」的なことを歌うけどまあ要約すると君僕僕君ってことだなと思って聞いていた。歌い終わった後の会話で「火刑場」という単語がでてきたのがいかにも魔女狩りが行われていた17世紀ヨーロッパっぽくってよかったです。パンが月曜から登場するのは描写が細かくていいな。

「僕は医者で君は患者だ。医者は患者を治すのが仕事、患者は医者に治されるのが仕事」(うろおぼえ)(患者じゃなかった気がする)みたいなセリフはそのまんま出てきてテンションあがった。アドリエンヌさんの名前さん出てきたときも同じく。知ってる台詞が出てくると嬉しくなる。反対に、「君はよくできたやつだな」に該当する台詞がなかったのは少し物足りないところ。

オデットの設定変更はちょっとびっくり。ここを変えた理由が最後までみてもいまいちよくわからなかった。

月曜ラストに早速M1リプライズがあったのはいいぞいいぞってなりました。Equalは「繰り返す」話だからリプライズはあればあるほど楽しい。

 

火曜日「our magic spell」

ニコラが日記を書くところからスタート。17世紀だろうなとは思っていたけどここで1665/5/12って明言される。1665年というと、イングランドでロンドンの大疫病と呼ばれるペストの大流行が起こった年らしい。

M2 ニコラが日記に書き込みながら歌う曲。ここ初日は最初の数フレーズの後字幕が消えてしまったのでオデットへのラブソングかと思って聞いていたのですが、再配信時に聞きなおしたらテオに向かって歌っている曲だったので怖かった。「完璧な友達」というフレーズが繰り返される曲でこの後二回もリプライズがある。結構大事な曲だった。

その後のM3はオデットからの手紙。序盤随分ふわふわしたことを言っているし内容の割に曲調が明るいな~と思っていたらテオが「不幸な結婚生活に落ち込んでるんだよ!」的なことを言い出してそういう解釈になるんだ?って思った。その後昔の思い出の曲になったからそんなに曲調とのずれは感じなくなったけれど。The Fire Fire Fire Fireのところ、なんかちょっと面白くなってしまった。後ろの映像も派手だし。

思い出話の流れから、謎の石をとりだすニコラ。昔水車小屋のブランディーという猫を助けようとして「儀式」をした思い出をオデットからの手紙で思い出したという。その後に歌われるM4がおそらくこの章の表題曲でしょうね。二人が使っていた呪文の「OS SANGUNIS CARO」「ANIMA CORPORI RESURRECTIO」はラテン語で「骨・血液・肉」「魂・身体・復活」みたいな意味っぽい。「失いたくないものを取り戻すとき」にしていた儀式らしいので、なるほどね?錬金術に突如として傾倒したのではなくて幼いころからそういうことに興味があった二人なんだな。

火曜はM5(M2リプライズ)のニコラソロでおわり。何かを調合しながら「テオは完璧な友達」って歌う曲。ここではまだ後半の変更ポイントを知らなかったので同一人物だもんね~フフフと訳知り顔でみていた。

 

水曜「golden human」

テオがやたらとテンションが高くてかわいいなって思ってたら、テンションが高かった理由が「ニコラを助ける方法が見つかった!」だったのでよりかわいいなってなった。

M6の錬金術の曲は曲入りがかなり意外で、不思議な曲だと思って聞いていた。途中で曲調が変わった後のメロディが好きです。特に最後二人が別々のメロディを歌うところ。ミュオタみんな好きなやつ。

ミュージカル版の賢者の石は原作よりも随分立派ですね。「僕はこの石ころに誓う」「そんな石ころなんかに誓うな」がただの石ころじゃなくなってる。

M7 マリエッタ大好きソング。ひたすらテオが楽しそうで好きです。原作よりかマリエッタに脈がありそうなテオ。一緒に告白しよう!はやばいけど。でもそれよりもニコラが小さいころ人気者だったって部分が意外でした。こっちのニコラはジェルマンにいじめられてなかったのかな……など考えていましたががっつり伏線だったね。ニコラのほうが立派なお医者さんだったという設定。

M8 ふたたびM2リプライズ。今度は「完璧な友達」のところじゃなくて「大丈夫」の部分をメインで繰り返している。「完璧な友達」が疑問形になっているのが不穏だしこの時手に持っているのが失敗作を処分するための薬だとわかると恐ろしい。

 

木曜日 Why did god

夜遅くに酔っ払いテオが上機嫌に帰宅してくる。「酒臭い酒臭い!」の名残が残っているのが伺えます。

M9 ニコラがカラスを捕まえてくるとこから入る曲。ニコラの病状の悪化が視覚的にわかりやすくされていて、この後の展開の危機感も増す。ニコラがとカラスを捕まえててきた意味合いもだいぶ変わっていた。飛べない鳥と狭い部屋から出られない自分を重ねて持ってきた風にしてある。ただこのあたりのニコラの台詞がどこまで本心なのかが読めない。早く自分から離れろ!と歌うのはそうすれば余計にテオが自分のところにいるだろうと思ったからなんだろうか。ニコラはテオに一貫性がないのが問題だと歌うけれどニコラもずいぶん一貫性がない。テオの罪悪感に付け込んで傍にいさせようとしているのかな。ホムンクルス同士の記憶を受け継いでいくなかで、この世界のオリジナルの「テオ」の「ニコラを失いたくない」という気持ちが現在の「ニコラ」の方に引き継がれていると仮定すると考えやすいかも。

M10 木曜表題曲。聖書の内容から入る曲。この曲は、少々唐突な感じがするものの、歌詞や曲調が作品の世界観にとても合っていてかなり好き。「いつまでこの営みを続けるのだろう」とか「もしかしたら僕は一度打ち捨てられた世界に生きているのかもしれない」とか、まさにEqualの世界を表している曲で、聞いていて楽しかったです。

 

金曜日 Theo’s breakdown

いきなりド直球なタイトルが来たなと思った。

このマリエッタ殺害事件についてはニコラが首謀したとは明言されないんですね。その前の「あなたはだれですか」の下りがないからわかりにくくないかって思っていたらそもそも「テオが偽物だと気づかれたから殺す」という前提がなかった。ただ、このニコラにとってマリエッタはテオを失ってしまう可能性になりえるから十分排除する対象にはなりえるんだな。テオを失いたくないが動機になりえるニコラだから……。直接手は下していないけど陥れたのはニコラかもしれない。

M11 M4リプライズ。儀式でマリエッタを生き返らそうとしたところからテオの意識が混濁していく。テオが壊れたのをぐちゃぐちゃの音楽で表現するの、テオの頭の中がそのままのぞけるようで好き。何も知らないでみたら多分シンプルに怖い。

 

土曜日 lies of lies of lies

金曜日の終わりから地続きで始まる。ここのテオがアドリエンヌさんに聞いた昔病院にいた優秀なお医者さんの話、原作を知っているせいで謎だったけどオリジナルのニコラの話をしていたんですね。

M12 M3のオデットの手紙の曲リプライズからの転調!!!たのしい!!!!!!!ここ一番テンション上がったかもしれない。「ニコラが死んだ」という事実をオデットからの伝聞にするのではなくて、手紙で明かすからこそ火曜日と同じ状況、同じメロディを使えるのギミックとして素晴らしい。原作を知らずにみていたらこの転調の部分で凄い鳥肌立っただろうなと思います。ただ、直後「オデットに会った」という話が出てくるので、じゃあなんで手紙?ってならなくもない。手紙が届くのとオデットがテオのところに来るのがほぼ同時だったのかな。

このあとの、「君はテオなら僕はなんなんだ」「君はニコラだよ」の部分はえ????ってなってしまった。正直、ここは変えたらだめなところじゃない?って思いました。原作Equalの「もう一人のテオ・ホーエンハイムだ」というセリフが登場したときの頭をガツンと頭を殴られるような衝撃が好きだったので……。それにこの改変だと二人はEqualになり得ないとも思った。

でもM13の土曜の表題曲で明かされる、二人はどちらも偽物で、もう50年以上この実験は続いているというふたつめのフックが面白かったので納得した。どちらもホムンクルスならちゃんと二人はEqualだった。1613年という年号がでてきて、オデットはもうおばあちゃんという歌詞を聴いたときは原作とまた違った衝撃があって楽しかったです。

 

日曜日 the dream

月曜日の最初と全くおなじやりとりからスタートするところは原作通り。

M14 日曜の表題曲に登場する「赤い海」は、水曜日にニコラが話していた赤い海と同じかなと思ったけれど、ニコラの方は普通に湖の話をしていたらしいですね。ニコラにも無意識に胎児だったころの記憶が残ってたのかと思った。

湖に行こうみたいなくだりで「日差しを浴びると~」って台詞があったけど日差し浴びたらニコラ死んでしまわない?という疑問はあった。胎児の頃(生まれる前)に戻る=二人で死んでしまおうかという解釈もできなくはないかな~と。胎児の頃に戻るが故の誕生日、とか。原作Equalとはまた別の余白の残る終わり方かなあ。原作の方で残されていた余白は埋められているけど、こちらに委ねる部分は委ねてくれている。

M15 最後の曲はM1のアレンジリプライズ。一番最後の曲が一番最初の曲のリプライズなのはこの作品的に最高の終わり方だと思った。

 

 

全体を通して。

最初に言った通り原作Equalのなかのひとつの結末を選んでミュージカルとして再編成したというのが一番しっくりくる感想。Equalってかなりラストの解釈の幅のある作品だと思っていて。それに気が付いたのは朗読劇版を観たときだったのですが(ストプレ版は観たまんま片方が片方を殺して生き残ったという受け止め方しかしていなかった)。

あくまで私が受け取った感想だけど、例えば朗読Equalの碓井・納谷ペアは「どっちももともと偽物だったし、最後は両方とも死んだ」って終わり方の印象をうけた。反対に染谷・細貝ペアを観たときは「しれっと両方生き続けているしたまに入れ替わって遊んでる」何の解決もしていない終わり方だなって思った。

だからミュージカル版の二人は原作の二人が何年も実験を続けて続けて辿り着いた成れの果てだと解釈すると面白いな~なんて考えたりした。こうした原作を知っているならではの楽しみ方ができるのは楽しいなと思う。

やっぱりどうしても「テオとテオ」から「テオとニコラ」に変わったのは原作を好きな人間としては残念に感じてしまう部分ではあるのだけど、潤色作品としては面白いしありかなあと。上記の解釈で進めるのであればオデットのこともこの二人の関係のことも「長年実験を続けたことによるバグ」だったら面白いなんて思ってしまう。

あとバックに流れてた映像の演出について、配信だったから気にならなかったけど多分現地で観ていたらちょっとうるさいだろうなと思った。もう少し控え目でもいい気がする。

結局タイトルが言いたいことの全部ですね。潤色作品としてはとても好きです。

楽曲は良かったし、小道具の使い方とか演出もそこそこ好きだったし、ぜひとも日本でも観たいから逆輸入頼むよ~という気持ち。

 

最後に、もし原作版Equalみてない方がいたら観劇三昧でみれるからぜひみてね!という宣伝だけ。

v2.kan-geki.com

あとこっちも潤色されてるっぽいけど今年の1/19~23に女性版equalが上演予定でまだ劇場チケットもあるし配信もあるらしいです。こちらも楽しみ。

『Equal~イコール~』 のチケット情報 - イープラス

*1:ストーリー・オブ・マイ・ライフの略称 Equalと同じ二人ミュージカル

2021下半期観劇まとめ

2021年下半期のまとめ!ちょこちょこ個別記事も書いてたし複ステしたのが多いからから書く量はそんなに多くないかなっておもったけどそうでもなかった。12月のスケジュールがバカ。

配信に関して、劇場でみて配信も買ったやつと今までにみたことあるやつを再度配信でみたやつはノーカンにしてます。

 

上半期はこっち

 

7月

響宴 『ONLY SILVER FISH』 7/24

下半期観劇はじめの予定はキャッツだったのがいきなり狂った本作。初日の一週間前に情報解禁があってひっくり返った。行くか行くまいか散々迷った挙句結局行きました。日帰りで。福岡から。

結果的にかなり行ってよかった~~!!って感じの演目だったので良かったんですが。西田大輔さん演出の響宴シリーズは、西田さんのレストランDisGOONieSで公演される半イマーシブ形式の演目。開演一時間前までに会場のみんなでお食事をして、そのまま公演に入る。

このレストラン全体を使った公演なところが結構面白かった。中央に空席の円卓があり、主だった演技はそこでするのですが、ほかにもレストラン全体をぐるぐる歩き回ります。自分の座っている座席の真後ろとかで役者さんがお芝居をするので楽しくて。すごい近い。好きな役者さんがすぐそこで頭のうしろに銃を突きつけられていたりして心臓に悪かった。私の座っている席からはみえない部分もあったから複数回行ったら楽しいんだろうな~~と思いつつ、なかなかそれが難しい。多分カウンター席が一番全体がみわたせるお席……だけど今回3席しか用意されてなかった。激戦区。

ストーリーは大好きなクリスティの『そして誰もいなくなった』をモチーフにしたものでした。数年前の公演時に気になりはしたのでタイトルは知ってたものの深い内容は予習無しで行ったので開幕後すぐに好きなやつじゃん!となった。ストーリーラインはよくあるクローズドサークルものである夫婦の婚約パーティに集められた人たちが天候の不良によって屋敷のなかに閉じ込められてしまうというもの。実際自分たちがいるレストランが屋敷のメインホールという体で演技が進むので臨場感があってどきどきしました。タイトルの「Only Silver Fish」というのは屋敷の水槽に一匹だけ泳いでいる魚のことで、この魚のほんとうの名前を知ることができれば過去を振り返り、そしてその時にした選択をもう一度やりなおすことができるという伝説を持つ魚のこと。正直トリックは『そして誰も~』をよんだことがあれば序盤で気が付くやつでしたが動機のところで読ませる脚本だなと思いました。

一度最後まで観た後だと、マシューだけでなくてロイも相当腹の読めない言動をしている。エミリーとの件がある上でリリィを婚約パーティーに呼ぶの相当性格悪いな。魂胆が読めない。そりゃあエミリーもどうして呼んだのって言うよな……。最後の「ロイよ!!」って叫ぶところのエミリーのお芝居が好きで未だ耳に張り付いています。オンリーシルバーフィッシュの使い方もお洒落というか、ああ、なるほどここで……となった。マシューの僕が死んだあと君が振り返ってくれさえしたらそれだけでよかったってセリフが刺さった。一番感情移入してみていたのはマシューだったかも。それから「アガサ」の使い方もうまい。一月に「デュマが登場する三銃士の物語」であるゴーストライターをみていたため同じような立ち位置かと思いきや、名前を使ったミスリード。それもマシューが用意した完全に外部の人間なんですね。この屋敷の中の殺人事件を描いた人物に擁立された「作者」であり「創造神」。マシューが退場したあとの「語り部」になるので、そのあたりが面白かった。でもやっぱりもう一度はじめからみたいな……という気持ちが先立つ作品。一度全員の立場を理解したうえでもう一度ストーリーを咀嚼したい。前回の公演DVD買おうかな……松田凌さんのマシューはみたいし。

あと本当に直前の情報解禁は勘弁してほしい。オタクにだって人生があるんですよ。それから今客降りという概念が死に絶えつつある時代にレストランで食事をさせたあとに全編客降りのようなイマーシブ公演やるのはかなりチャレンジングだなって思ったりもした。テーブルの上にパテーションあったけどさ。没入感は圧倒的だったしコンセプトはとっても面白かったので早くこれをなんのわだかまりもなく観れる時代になって欲しいと思うばかりです。

 

ACTORS LEAGUE 2021  7/20

劇ではないけど記録として。思った以上に盛り上がったしみんなでTwitterでわいわいいいながら観戦するの楽しかったし元気でたし城田優とまつやの国家斉唱で爆笑したので毎年催してほしい。

 

劇団四季 キャッツ 7/27、8/24、9/2、9/29、10/19、11/9

 

8月

ミュージカル レ・ミゼラブル 8/9、8/12、8/20、8/24

 

スポンジ・ボブ ミュージカル:ライブ・オン・ステージ(配信)  8/19

突如として表れてあっという間にTLを席捲していったスポンジボブミュ!!配信の最終日になんとかみました!(そのあとリアルタイム配信以外でも配信開始しててよかった)

スポンジボブのミュージカル(しかもBWのやつ)ってどうやるの!?って思ってましたがキャラクターのデフォルメ具合が本当に丁度良くってみんなかわいくて好きだった。衣装のデザインが天才過ぎる。底抜けに明るいスポンジボブの世界観のまま、同時に自然災害が訪れたときの社会が描かれていて作劇が見事だと感じました。「クラゲの群れに~」のところとか胸が詰まる表現もあって。メディアと政府の責任の押し付け合いとか「外から来た生き物」への差別とか。スポンジボブのミュージカルを作るときに楽しい要素だけを詰め込むこともできるはずなのに今の私たちが観てリアルな質感のこうした要素がそれでも重たくなりすぎないバランスで差し込まれている。観ていてはっとする場面が多い。

あと楽曲が一曲一曲粒ぞろいというか、全部インパクトのある耳に残る曲ばかりで最高でした。あとね、プランクトン……あんなん嫌いなオタクおらん……。眼帯にポニテはずるいでしょ……。そしてソロナンバーがまさかのラップ……圧巻だった。ありがとうございました。

 

劇団四季 はじまりの樹の神話 こそあど森の物語(配信) 8/28

配信日に突如予定が空いたのでバタバタ配信でみました!開幕直後の群唱に圧倒されたのも束の間、ホタルに全部を持っていかれた。あのビジュアルもなかなかにずるいけれどなにより関西弁はずるい。ずるい〜〜。スキッパーとホタルのデュエット(曲名把握しておらず申し訳ない)で「ごっつええやん」て歌ってるのかわいくてたまらなかった。子供の頃ホタルにぶつかっていたら絶対に今の自分の趣味とかそういうのに影響を及ぼしていたと思う。そうでなくともそもそもキツネが好きなんですけれど……。WICしかりアナ雪しかり夢醒めしかり、私は別離のシーンに頗る弱いのでスキッパーとホタルが離れ離れになるところで泣いてた。スキッパーの涙に誘われて泣いた。スキッパーがまた一人に戻ってしまうと思って。もうスキッパーには街の人たちがいるけれど、スキッパーの初めての親友とは離れ離れになってしまうのが辛い。でも、ホタル「光の神の役やるわ」って超軽いノリで神様役を引き受けていたので「帰ってきたで〜神様もかなわんわ〜」みたいにまた軽いノリでスキッパーに会いにきてくれないかな。いずれ戻ってくるみたいな別れ方だったからはやくかえってきてねって思いました。

歌はカラスとハシバミのデュエットの迫力がすごくて。画面越しにも伝わる圧巻の歌唱だった。あと全体的になんですが街の人らはスキッパーとかハシバミの話をきいたれよと思いました。

この演目タイミングが悪くて劇場に行けてないのですがどこかで観たいな〜〜ウーーン………。

 

9月

舞台『鬼滅の刃』其ノ弐 絆(配信) 9/4

ディレイ配信でみました!末満さんの作品枠。

一作目は円盤で視聴済み。曲も演出も結構ハマったので二作目は劇場に行きたかったのですが8月はちょっとレミゼで忙しかった……。おそらく来年に新作があるような気がするので次は劇場に行ってみたい。

ゲネを観た時からとんでもない八百屋坂だなと思ったのですが映像でみたらもっととんでもなかった。立川対策なんだろうか。ステアラステアラ立川ブリリアとひたすら劇場と対決させられている気がする近年の末満さん。

第一作に続いて演出音響その他諸々に馴染みがありすぎて一周回って面白くなる現象が発生。冒頭の操られている鬼の殺陣がうますぎるとおもったら丹下さんでした。

一作目はアニメ序盤がうまくまとまっていたように思うのですが、二作目は二幕の蝶屋敷での修行が冗長に感じてしまって二幕はあまり入りきれなかった……。原作に忠実にすると一幕がアクション、二幕が柱会議や修行のシーンとなので仕方がない部分はあるのですが……。でもなんか全部最後の女装ヒデ無惨様に持っていかれたな。美しいし歌がうめえ。残酷謡の無惨様ソロが好きすぎる。アレがみれたので全部オッケーになる。

 

劇団四季 アナと雪の女王  9/17

 

劇団四季 アラジン  9/18

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や~~~っとみれたやつ!!!とはいえ、観劇自体は二回目(観たのだいぶまえだけど)。なにがやっとかというと、やっと、やっと一和さんのアラジンを観れたやっとです。長かった……。一和さんデビュー後、幾度か東京に行く機会はあったのですが、東京に行く一週間前とか二週間前に抜けられてしまうことが多くてなかなかみられなかった。この時にようやっと自分の滞在期間と一和さんのご登板が重なり拝見することができました~~~!!うれしい。しかもあずさちゃんのジャスミンと一緒!!

一和さん×あずちゃんのアラジャスといえばソンダン65。ソンダン65でこの二人のAMMAを聴いた時に、一和さんにアラジンを絶対に絶対に絶対にやって欲しいと思った。お二人が一緒にパンフにお名前が載ったときいたときは信じられなかったけど、実際にパンフに名前があるのをみて嬉しくってちょっと涙がでてきて。それからようやっと、ようやっと劇場に足を運べました。なのでこの二人のペアで観られたことが幸せでたまらない。

劇中でAMMAを聴いたときにはこのお二人のAMMAを今度は劇中で聴けたことに感動して大泣きしていました笑 ソンダン65の時は一和洋輔と平田愛咲として歌っていたけれど、今度はアラジンとジャスミンとして、キャラクターとして歌われていたのが凄く胸にきて……。歌い始める前に「良いこと思いついた!」って顔をして歌い始める一和アルがすきです。一和アルはどこまでも無邪気で真っすぐでかわいいよ……。

あとあのまさか萩原さんのカシームが観れるとは思わず。BOAKはぎーむさんと白瀬さんバブカックにより声量がえらいことになってて笑った。二幕のハイアドがかっっっこよくて……観られてとってもラッキーでした。

 

ミュージカル ジャック・ザ・リッパー  9/20

 

リョーマ!The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様

映画だけど最高だったしメンタリティとしては劇場に通う感覚で映画館に通っていたので。12月まで応援上映に行き続けている。圧倒的帰省です。テニスサイコーセイヤーの気持ちを思い出させてくれる。あと映画館で声は出せなくともオタクと一緒になって踊り狂うの楽しいな~という気持ちになります。今すぐ円盤が手元に欲しい。

 

10月

宝塚歌劇 月組『川霧の橋』『Dream Chaser―新たな夢へ―』 10/14

宝塚デビューでした。博多座公演!今回だけなのかどうかわからないのですが、博多座だと銀橋がないんですね。そこがちょっと残念だった。宝塚、博多座に毎年来てくれていたのだけれどなんとなく観に行ってなかったんですよね……我ながら勿体ないことをしている。変に敷居をあげないで軽率に行っておけばよかった。

冒頭が不穏なはじまりだったのでてっきり死別or両方死んでしまうエンドかと思いきやどっちも生き残ったのでびっくりしちゃった。って話を友人にしたら、それは雪組に毒されすぎだよって言われて笑った(だいきほ好きな友人にだいきほ時代の雪組の映像に残ってるものはだいたい全部見せてもらっているので私の宝塚知識はだいきほの雪組で形成されている)。雪組なら二人とも死んでいた(コラ!)。

期せずして、これもスポンジボブミュに引き続き「災害と社会」を描いた作品だなと。江戸時代が舞台にも拘らず貧困、ヤングケアラー、セックスワーカーなど今の私たちがみてもはっとするシーンが多かった。

役者さんだと天紫珠李さん演じるおくみちゃんが好きでした。とっても可愛らしくて印象に残ったので、あとから元男役の方だと知ってびっくり。でも言われてみれば後半の凛としたお芝居にその部分を感じたような。

二幕のショーは、ただひたすらに生でみる宝塚のショーってこんなに煌びやかで素敵なんだ!!!!!と感動。映像でみるよりもずっとキラキラしていた。劇場空間がそうさせてくれているのかなって思ったらヅカオタ友人が宝塚の衣装のキラキラは映像に乗らないレベルでキラキラしているって教えてくれた。気の所為じゃなかった。実際にみる大羽根って映像で想像しているものの数倍おおきいですね。宝塚たのしかった……!

 

11月

ミュージカル ユタと不思議な仲間たち  11/2

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回数でいうと三回目か四回目~のはずなんだけど小学校の時の記憶です。子どもの頃にみたのとは全然ちがう観劇体験になった。

とりあえず最初に来た衝撃はセリフとか曲とか結構覚えてる!!人間の脳ってすごい!!!でした。信じてみようとか、前奏をきいたときにあれこの曲しってる……?ってなって歌い始めたら歌詞も覚えていて。クルミ先生が「春の野原に咲く花は?」って歌ったあとも、みんなと一緒に「れんげたんぽぽひなぎくすみれ」って(勿論頭の中で)歌えたし、その後の3メートルの下りも覚えていた。夢醒めのときもこんな感じだった。こうして座席で自分ですら覚えていなかった観劇体験がフラッシュバックするのって不思議な感じです。

反対に覚えていなくて新鮮にびっくりしたポイントは、こんなにがっつりダンス演目だったんだ!ということ。ユタ役の横井くんはキャッツで拝見していたので二幕のダンスシーンはマジカルターンだっ!!!って思ってテンション上がりました。

ペドロ親分が登場するシーンがかっこよくて好きです。グリーンのスモークは綺麗だし、レーザーの照明を割って屋根から降りてくるの超かっこいい。それからヒノデロ美しすぎて心を奪われていた。子どもの頃にヒノデロを浴びているせいで絶対に私はなにかに目覚めていると思う。ペドロのことをお兄さんって呼ぶのが好きだし、モンゼと並んでるところ超かわいい……。なにより、一番若いのにぺどろ一家のお姉ちゃんしてるのが好きすぎる。わじゃわじゃを歌うときも生きているってすばらしいを歌うときも目を大きく見開いて一心にユタをみて一音一音を発しているのが苦しくなるほどやさしくて、剥き出しのことばが痛々しくて涙が込み上げてくる。作品としては行ってしまえば田舎に同化してしまう話で、大作たちのしていることはいじめだし田舎の悪いところが詰まっていて嫌なのだけど、それでも座敷童たちが伝えてくる真っすぐ真っすぐなメッセージが強くて涙が出る。この作品は、メッセージがあまりに強すぎて少し苦しくなってしまうこともあるのだけれど、それでも懸命に生きるユタや座敷童たちの姿が好きだなと思います。

やっぱりお別れのシーンに弱いので友達はいいもんだのリプライズが一番泣いた。ユタが大人になったとき、もしかしたら座敷童のことは自分がみた夢だったのかもって思うようになるかもしれないけれど、それでもユタの心に座敷童たちは残っていて欲しいと思って。私がこの作品を覚えていたみたいに、ユタの心の深いところにいて欲しいし、もうユタが座敷童たちを見ることができなくなっていてもたまにユタの様子を見に来て欲しいです。

泣きすぎたのか翌日起きるとふたえ線が消え去っていました。

 

宝塚歌劇 雪組CITY HUNTER』-盗まれたXYZ- 『Fire Fever! 』 11/3

初めての東京宝塚劇場!!!初めての雪組公演!!!!初めて生であーさをみれる!!!ってことでルンルンで観に行った演目です!!うれしかった!!前述の通り雪組さんの映像はたくさんみせてもらっていて、例にもれずあーさのあまりにお美しいお顔にノックアウトされたクチだったので映像じゃなく直接拝見できるのは本当にうれしかった。チケットを手配してくれた友人には頭が上がらない。

公演内容については、『CITY HUNTER』の舞台化としての完成度もさることながら、なにより驚いたのはこのテーマでトップコンビ就任公演として完璧な物語だったこと。獠と香が改めて「パートナー」として歩き始める話でありながら、新しい雪組が前に進む話。「シティーハンター」をしっかり描きつつトップコンビ誕生の物語として最高打点を出してくるのが上手い。はじめて友人に見せてもらった公演がひかりふる路だったので余計に衝撃を受けました。もちろん、ひかりふる路も大好きです。あと冴子さんが良すぎて彩みちるちゃん~~~ってなった。失いたくない。雪から(どにわか)。

二幕のショーも、もともと楽しみだったのですがもう楽しすぎて。宝塚のショーって舞台の「楽しさ」が全部詰まっていてみていると凄い元気が出てくる。ただ一か所あの、ドン・ジョヴァンニのあーさは あれは一体。なに?その直後のジャズダンスのところのあーさ死ぬほどかっこいいのにさっきの愛の狩人さんがちらついてしまって集中を乱された。グレーのキラキラの衣装の周りにこれでもかと娘役さんを侍らせるあーさはなんかもう凄かったですね(語彙力の敗北)。娘役をわんさか侍らせているあーさからしか得られない栄養があるのだ。四場の咲奈ちゃんとあーさが向かい合って踊るところはなんか絵が美しすぎて動揺してしまった。咲奈ちゃん以外全員達磨の迫力には圧倒された。唯一の男、彩風咲奈!!!!という圧を感じた。ラストのデュエダンは、新しい雪組の門出なんだ~って思ってじわじわ涙が出てきました。なんも知らんのに。なんかもう、全てがず~~っとたのしくてたのしくて、たのしかった。

 

ミュージカル ナイツ・テイル 11/15

 

 

12月

舞台 MOTHER LAND  12/3、12/5、12/7、12/8、12/10、12/11(+12/18 配信)

12月頭はひたすら明治座に幽閉されていた。この演目なんとデフォルトで約4時間あった。腰が死ぬのでマチソワができず、せっせと明治座に通っていました。

舞台は春秋戦国時代。困ったことに中国史がよわよわなので一度目はとにかく理解するのに必死でした。国の名前とだれがどの陣営にいるのかと役名と覚えるのが大変……パンフに相関図とかのっけてほしかった。それから二重三重の入れ子構造になっているのが面白いところでもあり、話を複雑にしているところでもあるなと。冒頭の嬴政の「語り」から物語がはじまるわけですが、あの時点での嬴政は既にもう一人。「語れば、お前に会えるんだ」の言葉が日に日に柔らかくなっていって、嬴政にとって昌平君という存在がいかに「心許せる人」であったか、稀有な存在であったかを示していると思ってみていた。

作品としては凄く面白く、日を重ねるごとに演者さんの芝居が凄いスピードでよくなっていったので、最後の方にいけばいくほど涙のでてくるところが増えていく舞台でした。特に7日の松田凌さんのお芝居が凄く心に残っている。嬴政が昌平君を追い出すところの少し前、春申君の回想に入る前から涙を流していた日があって。嬴政にとって昌平君との別れは予期していたことだったから函谷関の門を開けろと言った時から今ここで昌平君を送り出す覚悟を決めていたのだろうと。嬴政は人前で涙を見せないひとなので、この日の芝居はおそらくイレギュラーなものだったのですが、それでも嬴政の「人」の部分を見せつけられたようだった。その顔のまま昌平君に「でていけ」というものだから。この人はどこまでも王なのだなって思いました。その顔で追い出される昌平君よ……昌平君はいつもここで(というか楚の民に跪かれたあとから)大泣きし始めるのでこちらも一緒に涙が出る。あとは凰稀かなめさんが圧倒的に優勝ですね。客席全員を恋に落として帰っていった。

この作品はまだ言葉に出来ないところが多くてもう少し噛みしめていたい。またしっかり言葉にできたら単体で記事を書きたいです。

 

舞台 あいつが上手で下手が僕で(配信)  12/13

フォロワーさんのオススメで!ドラマ放映中から凄くカミシモに嵌っているフォロワーさんがいらして、一緒にドラマをみていて面白かったので舞台も鑑賞しました~!!アーカイブ放送を観たので初日のものを観劇しています。私は普段お笑い番組とか一切みないで、家族がM-1とかつけててもあんまり笑えずにみているタチなのですがアマゲンのフル尺漫才がめちゃくちゃ面白くって楽しかった。ひとりでみていたのに凄い声出して笑ってました。底抜けに笑えて元気の出る作品で、オススメして貰えてよかったです!客席で笑いが起きているのに配信で映ってないとこがちょこちょこあってそこはちょっと残念だった。余裕があれば劇場まで行きたかったのですが、12月が既に観劇予定詰まっておりくやしい。現地に行ってみたかった。兎角、舞台発表当初は鑑賞予定のなかった作品なので、こうしてオススメして貰えて出会える作品があるのが嬉しいです。ナイツ・テイルしかり、舞台はひたすらにご縁だなと思います。

 

柿喰う客 仙台遠征公演2021 恋人としては無理  12/18

 

ミュージカル ストーリー・オブ・マイ・ライフ  12/21

フォロワーさんのオススメシリーズ!ここ二年周囲に嵌っている人が多いという印象の作品でした。それだけの人が嵌っているならきっと素敵な作品なんだ~と思って兄ペア→弟ペアの順にマチソワ。グリブラとか万里生さんコンサートとかで雪の中の天使とバタフライはめっちゃきいてたのでそれを報告したところ「それどっちも歌うの逆だよ(水色ペア版だったから)」って言われてそんなことある!?ってなった。あるよ。

たまになんで初演観てないのという質問をいただくのですが初演時私は日本にいなかった……。

まだ来たぞトムがなんたるかを知らない観劇前の私

観劇後第一声「来たぞトム、来ないじゃん……」

いや、「来たぞトムが来ない」のは知っていたんですけど思ってたのと違った。トムが来ないんじゃなくってその日が来ないんだ……。「来たぞトムが来ない」のを中途半端に知っていたせいで該当曲を聴いた瞬間にこの流れで来ないの!?!??イヤだ……と思いました。

歌というか歌詞は1876年が一番好き。そうだよなあって思って聞いていた。何年も前に書かれた本が私たちの手の中に今あるんですよね。ただあの、他の作家の引用で弔辞を語ってしまった後にこの曲のリプライズがくるの結構酷いですね。

バタフライのときのまりアル、すごい顔していたのを覚えている。目をかっと見開いて絶望しているような顔。「蝶」みたいにトムが外にいってしまうって気が付いてそんな顔をしていたのかな。対してもルヴィンはあ、これ自分の曲だって気づいたタイミングで表情が変わる。自分の語ったことをトムが無自覚に物語してること自体にはそんなにショックを受けていないようにみえたのだけど、それに気付いていないことについてあんな顔をしていたのかな。自分が話したことを「覚えていない」のが一番ショックだったんだろうか。たったひとこと、どのタイミングでもいいから「ありがとう」っていえばアルヴィンはそれでよかっただろうになと思います。アルヴィンのおこしたほんのちょっとの一押しがトムを遠くに遠くに運んで行ってしまってたんだって思って、アルヴィンの気持ちを思うと苦しくなる。君は蝶……。

両ペアみるとアルヴィンよりもトムが全然違ったなって印象。弟ペアはなんかもうちょいどうにかならなかったんですか?と思う。あんなに仲良しだったのに……というかひらトムが頑なすぎるんだろうな子供の頃から………。「プラモデルがいいんだけど」と「プラモデルでもいいんだけど」って結構ニュアンス違うよね。ひらトムのところには「天使が舞い降りて」まきトムのところには「親友が話しに来てくれた」のかな。ひらトムずいぶん生きづらそうだったからアルヴィンが眩しかったろうなと……。ひらトムはあったかいお風呂に入っておいしいものをお腹いっぱい食べて欲しい。とりあえず一回帰省したらスランプあけるとおもうよ。

でも一番最初の出会った時はトムが天使だったんですよね。「ママはクラレンスに出会って僕はあったんだ君に」ってところが凄く好きです。言葉のはこびとか。二人の出会いって決して運命的ではなくってただ担任の先生が二人を引き合わせてくれたってだけなんだけど、でもアルヴィンにとっては天使がきてくれたんだな~って思って、素敵な歌詞だなって思います。

引用のくだりは、もルヴィンは哀でまりアルは怒なんですね。まりアルやや怖いと感じるところがちょくちょくあった。もルヴィンなんか「ああいうキャラクター」ぽかったような。あざとさを感じた。まりアルはなんか……でっかいやせいどうぶつ………。

兄ペアのクリスマスカードの一枚目が机の上に乗っかってトムが届いたクリスマスカードに一瞬目をやってすぐに見ないようにしていたの、イレギュラーなやつだったと後からしりました。届いた方が苦しさが増す気もする。

アルヴィンを「芸術」と呼んでしまうあたり理解からは遠いなと思ったりなどもした。でも、アルヴィンから得た発想を美しい言葉で紡げるのは間違いなくトムの才能なんだけどなって思ってずっとみていた。しかも何本もベストセラーを生めるような、万人に愛される言葉で。

冒頭のアルヴィンの台詞が後から過去の物語に登場するもので、トムの記憶の再生だとわかる構成が好きです。死んだ後ひとがどうなるかなんてわからないから全部トムのみる夢。けれど夢の中であれ幻想であれ死んでしまった人を想ったりそこにいた人に夢をみることができるのは残された人だけですからね。

どうしても、アルヴィンはどうして死んでしまったんだろうと考えてしまうけれど、それを考えること自体が野暮なんだなって観劇後に思った。「そこにない物語を探さないで」という言葉が優しくて好き。大きな事件が起きるわけでなく、ただ、二人の物語を振り返るだけのお話だけれど優しく包んでくれるようなこの作品が好きです。

 

 

劇団四季のアンドリュー・ロイド=ウェバー コンサート~アンマスクド~  12/22

全員歌がうめえ~~~~!!!(当たり前)全てが盤石すぎる最高のコンサート。歌唱力が保証されている四季の演目なかでも特に歌の上手い人は目を引くけど、その「特にうまい人」10人引っ張ってきているとんでもないミュージカルコンサートです……。

さいころは四季がどれだけすごいことをしているかわかってなかったけど、このクオリティでこれだけの数の公演を同時に上演し続けていることのすごさみたいなものを改めて感じました。冗談抜きで劇団四季のある日本に生まれてよかったと思える公演だった。涙が出る→卿のコメントで涙引っ込む→また泣くをひたすら繰り返していた。最初に卿から劇場注意を食らう公演ってなに?

演出や衣装からして最高だった公演。冒頭のインストゥルメンタルをスポットで追いかける演出に鳥肌が立ちました。女性陣ひとりひとりの魅力を際立たせるスタイリングも天才。あずちゃんにクロップドTシャツをあててくださった衣装さん本当にありがとうございます。あと真瀬さんがパンツスタイルなのも素晴らしかった。

しょっぱな白瀬さんのパワフルボイスでぶちあがるの楽しすぎます。ところで直前に恋無理みてたせいでJCSに謎のバフがかかりました。ジーザスクライスト 誰だあなたは誰だ。

ひたすらずっと楽しかったのですが、一幕はなんといってもキャッツパート。まずキャッツのオーバチュアを生演奏で聴けたことに感動しすぎて放心しつつ泣いてた(直後モヒートくんで引っ込んだ涙)。山下さんのタガナン、アレンジが結構好きでした!表のときはう↑らがわさ♪そして唐突に腕立て伏せを始めるタガー。あずちゃんがタガーにめろめろになっていて可愛かった~~!あずちゃんランペちゃんの幻覚がみえました。そして厄介ボーイズもとい厄介ボーイ担当の洋輔お兄ちゃん。洋輔さんの一幕ソロまさかのここだけで笑ってしまった。使い方が贅沢すぎる。スキナンは編曲されてんのに客席の手拍子があまりに揃ってたのが一番面白かったです。あと私は一人で歌って踊るタイプのミストナンを観てはいるんだけど物心つく前で全然覚えていないから旧バージョンを感じる事が出来て嬉しかった。そしてマキャナン……個人的に今回これを聴けただけで最高に満足だったナンバー……。真瀬さんディミと志音さまのボン様、キャスティングが神すぎる。真瀬さんのディミさまお声も視線もかっこよすぎて未だに目に焼き付いているし志音さま、色気が凄まじい。あんなんずるいわ~……🦊江畑さんのメモリーはもう流石の一言に尽きます。一気にキャナルシティ劇場が恋しくなってしまった……。

二幕!バッドシンデレラあずちゃんがポテンシャルを見せつけてくれたという印象。裏に切り替えず高音をスコーンと響かせて、ラストのくたばれのスマイルも最高……。サンセットのノーマを江畑さんで聴けたのは本当に感動した。サンセット大通りは今年英国のカーブシアターであった配信を観ていてその時ノーマがグリザベラと重なる部分を感じたんです。だから本役グリザベラの江畑さんの歌唱は自分のなかですとんと腑に落ちました。舞台上で映画のワンシーンを再現するところはそのまま映画のシーンが浮かんだし、ノーマがそこにいて鳥肌が立った。洋輔さんのTill I〜も神キャスティング曲。聞いてる途中で動悸激しくなるし聴き終わってからもしばらく息が落ち着かなくて……現役ファントムによるTill Iの破壊力……音源が欲しい……。一幕で力を溜めていたぶん二幕洋輔さん大活躍でしたね!オペラ座パート、アンマスクドなのにマスクしてでてきた洋輔さんにそれはもうただのファントムなんよと思った。飯田兄弟に取り合われる真瀬さん。

 

劇団壱劇屋 二ツ巴-Futatsudomoe- 12/23

こちらもいつか観たいって思ってた劇団さんの作品。ようやっと現地に足を運ぶことができてハッピーでした。作品自体は8月に上演予定だったもの。その時は感染拡大の影響で全公演中止になってしまっていたのですが、8月公演だと私はどうしてもみれなかったので御縁を感じた作品です。

とにかくこんなことできるんだ!?の連続だった。ノンバーバルなので、(周りに散々大丈夫だよ!と言われてはいたものの)本当にわかるかな?大丈夫かな?って不安があったのだけど開幕30秒で払拭された。わかりたくないほどにわかる。ビニールを使った水の表現がかっこいいしビニールで幕を張られたなかにタイトルがぼんやりと浮かび上がるのはアガる。水がひくとその中に人が立っていたり剣があったりといった表現もめちゃくちゃかっこよかった。ビニールひとつであんなに多彩な表現ができるんですね……。

心が幼児なのででけえ武器がでてくるとテンションがあがる。弓矢の表現もすごかったな……。舞台空間の使い方が上手いんですね。あのハコであの密度で矢が縦横無尽に動くのは迫力があった。あとまたしても直前にみた演目の影響でファントムとクリスティーヌを幻視するなどの事故がおきました。

あとはあの……栗田さんの殺陣が凄すぎる。素人目にもとんでもなくうまいことがわかる。日南田さんVS栗田さんのところとんでもなかった。栗田さんの殺陣を前方列で浴びられたのは人生の財産になるなと思いました……。と同時にこの役の龍ちゃんかっこよかっただろうな~~~という気持ちも湧いてきてしまい、、、、えーん。

役だとともえちゃんが好きです。あんなん嫌いなオタクおらん。水剣を振りかざす目がかっこよすぎた。

 

劇団四季 ロボット・イン・ザ・ガーデン  12/25

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東京再々演。今年5月に福岡公演をみていたので演目としては二回目ですがかなり変更されていました。まさか曲が一曲まるまるカットされるとは思わずびっくり&残念。皆言ってるけど、全国公演向けにストーリーをわかりやすくブラッシュアップした感じなのかな。

今回新しく拝見したキャストさんのなかだと唯くんのカトウが~~すごくかわいくて好きです。萩原さんのカトウはかっこよかったけど唯くんのカトウはかわいくてお茶目。雨の中のタップダンスもなんかキラキラしていた。流石夜行列車のアイドル。

タングで作品の印象がだいぶ変わるなということも思った。福岡でみたのはかわいいかわいい千紘ちゃんタングだったけどうぶちゃんのタングは溌剌としていてかなり印象が変わった。最初感情表現がたどたどしかったタングがどんどん明るく活発になっていくのが凄かったし、最後銃渡されたところの唸り声は怖かった。

ベンとエイミーは福岡で拝見したお二人でしたが、やっぱりこのお二人のお芝居が好きだと感じました。二人とも感情をわーって爆発させるタイプではなくてぼろぼろと零すお芝居をされる二人なのでこの物語にこんなに寄り添えるんだと思います。

タングの口が出っ張っているところが照明の加減で横から光があたると涙のマークにみえて、「タング捨てる?」のところとかタングが泣いているように見えるので胸がぎゅっとなりました。照明の魔法。

それからやっぱり最初ベンがソロで歌っていたロボ庭をタングと一緒に歌って、最後はタングがひとりで歌い始めるのはベンとの旅のなかでタングがタングになったのを感じて大好きなシーンです。今年一番であえてよかった作品。けれどキャストさんを変えてもう一度観たいな~年明けどうしようかな……。

 

シン る・ひま オリジナ・るミュージカ・る『明治座で逆風に帆を張・る!!』(配信) 12/28

気になりつつ円盤発売を待とうかな~って思っていたやつだけどフォロワーさんのご厚意でみせてもらいました。うれしい。

想像の数倍めちゃめちゃちゃんとしたミュージカルだったし後味悪い作品が多いときいていたから構えていたら割とスッキリ終わったので楽しかった。衣装がちょいちょいおかしいけど。頼朝はだいぶルドルフだしマリーアントワネットみたいな衣装きたサカケンさんが登場したときは大笑いしてしまった。似合いますね。歌唱力バケモノ集団に放り込まれる櫻井圭人くんかわいそう。サカケンさん最後格付けチェックで間違えまくったひとみたくなってたのが面白かった。冒頭のなんかマント被った乞食ぽいひとたちは8月にいっぱいみたね。fonsのラオウダービーに参戦していたSpiさんがラオウっぽい恰好ででてきちゃったのがツボでした。しかも30日から本当に世紀末にいた人が現れてしまう。役は辻本さんと伊藤さんの役が好きでした!君主は二度違えない(ニュアンス)かっこいい!すき!

二幕は……二幕は、あれは、なんだったんだあれは。一時期わりとしっかりDオタをしていたのでいろんなところで心がざわざわしたよ。幕あいて直ぐジャングルのキャストさんのような恰好をした平野さんが登場してだめだった。し、そのあとBBB始まってポカーーンとしました。往年のジャズの名曲の音を外しながら歌うの難しくない???逆に凄い。そして突如ドラムソロを披露する粟根ミッキー(ミッキーではない)。アリエナイ人魚さんたちはビジュアルインパクトがよ……そしてバカみたいに歌が上手い。あとツンデレラの下りは、伊藤さんあなたは本当にだめだよ。ほんとうにだめ。GPSはわりと元ネタまんますぎて怒られないのこれ?となった。でも一緒にみていたフォロワーさん曰くこれは例年比大人しい方だったらしいのでるひまってすごいところだなって思いました。

 

 

そんなわけで現地観劇は32演目63公演。今年はちょっと思い立ってジャンルごとの演目数、公演数もまとめてみました。

 

ミュージカル   11演目18公演 配信5公演

劇団四季     10演目17公演 配信1公演

宝塚歌劇団      2演目2公演  配信2公演

ストレートプレイ   7演目15公演 配信1公演

2.5次元舞台    4演目11公演 配信1公演

 

配信に関しては現地でみてその後配信でもみたやつ(无伝とか配信のたびにみてた)をカウントしてないのでちゃんとカウントしたらもうちょいあると思うのですがこんな感じでした。おそらく去年までより演目のジャンルの偏りは減っているとは思う。まあ去年はあまり比較対象にならないのだけど。今年は四季が増えた。演目数と公演数のひらきが一番大きいのは2.5でした。天伝以外は全部2回以上いってるからな……。あとストプレは15公演みているとはいえ11/15が西田さんの舞台なんですよね。今年は末満さんのストプレがなかったから余計に偏った気がする。

円グラフにしてみたのでそれものっけておきます。

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一番ダメージを負ったのは1月のパレード、一番面白かったのはロボット・イン・ザ・ガーデン、一番の想定外の嵌り方をしたのは无伝でした。

結構いろいろ観れたんじゃないかなっと思います。来年は少し落ちつくのか、或いは増えるのか自分でもまだわからない。……といいつつこれ今日の韓国ミュ版equal配信前に書いているのですが、equalは2022メインなので来年の方にカウントする。

2021福岡キャッツまとめ

2021年下半期の観劇まとめにいれようと思っていたのですが独立させた方が見やすくなりそうだったので別にしておきます。

 

この演目が福岡で上演されると決まった時に、あんまり嬉しくて涙を流した作品。それくらい初日を心待ちにしていました。

ロングランということで、だいたい一カ月に一度くらいのペースで観に行っていました。なので総観劇数はそんなに多くない。こうして好きな演目に、来週行こ~って感覚でふらって行けるの、凄い幸せだなって思いつつ劇場に足を運んでいました。たぶん一番理想的な作品との距離感。

いろんな席を楽しめたのもよかったな。個人的に一番楽しかったのは二階最前かも。四季のキャッツは世界的にみても群舞のレベルが高く本当に素晴らしいので、ダンスフォーメーションを堪能できる二階最前は最高だった。あとミストがマジックで劇場に光を灯すところなんかは後ろの方にいたほうがわーってなりやすい。が、タガーのオタクの人格としては上手端E~G列しか勝たん!のである。一度くらいゴミシートに座っとくんだったかな~というのが若干の心残りです。

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2階最前からの景色

好きなところ多すぎてなにから感想を書いていいのかわからないので、ひとまずタガーの話をします。自分のレポを見直したら半分くらいタガーの話しかしていなかったので……。

ほんとうは公演ごとにちゃんと纏めておくべきだったな……とやや後悔。

 

上川さんタガー様の話

大井町キャッツのころからTwitter上で頻繁にお名前を拝見していた上川さんタガー様。ずっと観たい観たいと思っていたものの大井町ではタイミングが合わずに観ることができませんでした。上川さんご本人はSILの福岡公演で拝見していました。

私の中の「理想のラム・タム・タガー像」に一番近いタガーだったなという印象。ストレートにかっこよくて、でも雄猫たちと絡んでいる時はやんちゃでバブちゃんには優しいタガー様……。私はタガナンの雌猫わんさか侍らせているタガー様も好きなんですがスキナンのヤクマンのところとかで雄猫たちとわちゃわちゃしているのをみるのが好きです。私が観た時だとヤクマンの時割とびびっている率が高かった気がする。お前が前行けよって押し付けあっていたり。かわいい〜。凄く好きだったのはヤクザなマンクに向けてキックしていたタガーとそれをみて華麗な蹴りを披露されていた後藤さんギルの回。可愛すぎる。ヤクザなやつも……のところヤクザなマンクもみたいしそれに反応するタガーたちもみたいしで圧倒的目が足りないポイント。ミストナンも足りんか。

それから歌とダンスのバランスが一番良いのも上川さんタガー様!タガナンとかジェリクルボウルとかでダンスが一通り終わったあと毛皮をぴってして綺麗に整えていらっしゃるところが好きポイントです。

デュトナンだと金本さんとのデュエットが好きでした。抜群の歌唱の安定感は言わずもがな、声が重なる前に一度お二人が視線を交わすのが好きで……。なんだかんだマンクとタガーの間にある信頼のようなものが見え隠れするような至高の瞬間でした~。デュトナンホントに好きです……。

上川さんタガー様からはばっちりウィンク&投げキッスのファンサもいただいており好きの感情しかない。記念カテコの時、ぬいぐるみを抱えているお子さんを発見するなり指さしからの投げキッスの一本釣りを目撃してしまい流れ弾に被弾して大変でした。どうしてそんなに素敵なの。

 

大森くんタガー様の話

個人的親タガーの大森くんタガー様。初めて自分の足で観に行った大井町キャッツに出演していたのが大森くんタガー様でした。そのころはまだキャッツ自我がそこまで強くなかったものの、タガーのダンスや振り付けから感じる色気にほくほくして帰った記憶があります。それからなんといっても大森くんは最新版CDであるメモリアルエディションの収録キャストなのでお歌は一番聴き込んでいる。そんなわけでアナ雪のキャスボとにらめっこしつつ大森くんの登板を開幕時から待っていたのですが、タイミングが合わずに結局一度しか観られませんでした……哀……。登板期間も結構短かったですよね~。その期間中にもっと行けばよかったなって思いつつ。

やっぱり大森くんのダンスが好きだ~~~って思った大森くんタガー様。ダンス猫か??ってくらい長いおみあしをものともせずに綺麗に踊る……。タガーってミストとかタンブルとかよりによってダンスのエキスパートのキャッツたちと踊らされるんですがそれでも見劣りしない見事なダンスを披露してくださる大森くんタガー様。好き。あと上川さんタガー様、佐久間さんタガー様に比べるとやんちゃなタガーですね。色男というよりはチャラい……?笑 オフマイクでカモーンとかヘイとかどんどん入れていく元気いっぱいなタガー。ジェリクルソング前レンジ横でバブちゃんとグータッチしていたりネーミングのはけぎわにジェリロ(だったと思うけど自信がない)にバーンッってしてたり序盤から絶好調。

それから大森くんタガー様をみた回のマンクとミストが岩崎さんと桒原さんで、凄い仲よさそうで好きなトリオでした。みんな元気!ミストナンのグータッチ、いぇ~い俺たちマブダチ!!って感じで楽しかったし、リーダーの缶キャッチのところだと「とれた!」「ナイスキャーッチ」みたいな動作をしていて仲良しだ~~って思いました。思わずにこにこしちゃう。

あと岩崎さんと大森くんのデュトナン、お二人のお声が重なるタイミングで一度ほんの少しハスキーにも聞こえる歌声で物凄い色気というか艶のあるハーモニーになった瞬間があって、感動しました。あの歌をもう一度ききたくてこのペアで足そうとしたけどスケジュールがどうにもならず……悔しすぎる……。

タガーの話からはややそれますが、岩崎さんリーダーのヤクマン癖強すぎません? そんなに飛ばなくても笑 爪先まで足をピンと伸ばしてダンッッて降ろして……からのにこりと愛想笑いのギャップ。ここはタガーたちの反応をみたいのに視線を持っていかれてしまう岩崎さんリーダーです。

 

佐久間さんタガー様の話

福岡キャッツはこれで見納めと自分のなかで決めていた回を終えた翌週、まさかのインがあった佐久間さんタガー様。みたい~~~と大暴れした挙句、TLに流れてきたキャスボをみて行きたすぎて涙が出てきたのでこれはもういよいよだめだと思ってチケットを取りました。どうしてこんな限界で生きているのか。思うに、金本さん佐久間さん押田くんの並びだったのがまずい。あのおっきいマンクとおっきいタガーに挟まれるかわいい押田さんミストのトリオがどうしてもみたくなってしまった。

他二人のタガー様に比べるとお兄ちゃんな印象を受けたタガー様。大人っぽい魅力を一番感じる。拝見した回が全体的に余裕のある動きが多かったんですよね。スキナンのヤクマンのところとか。ヤクザなマンクに全くひるまず、むしろ「ほら見ろよ優等生様がなんかやってるぜ」と言わんばかりにギルの肩を組みマンクの方に近付いていく。マンクとタガーは勝手に同い年くらいに思っていますがこのペアだとタガーの方がちょっと年上かも?って思いました。ミストナンも、他二人にくらべて大はしゃぎ!という感じではなくミストフェリーズを信じて見守るタガー様で、素敵だった……。それからタガナンのラストが本当に最高だった。ごむ~~~~~でタガーのしっぽにじゃれているランぺちゃんからサッとしっぽを奪い去り、自分の口元にもっていってしっぽの先のフサフサにちゅっ!ランぺちゃん「!?」客席の私「!?!?!?」 顔を近づけてフェイントキスができない制約があるなかでこんな魅せ方ある!?天才!?!?ってなった。最高のタガー様。でもかっこいいだけでなくて、タガナンだと「欲しいものなどなんにもなぁ~~い!!!」ってアレンジして歌われていたり、レンジ上のリーダーに豪快に絡みにいってしっぽで頭をべちべち叩いて嵐の如く去っていったりお茶目な一面もあるタガー。花道に降りてきてのサービスがなかったのでそれが少し寂しかったのですが、なんか最近やばいらしいですね。爆弾レポが流れてきて佐久間さんタガー様!?になっている。魅力のパワーアップが留まることをしらない佐久間さんタガー様。

きっと魅力的な低音ボイスも佐久間さんタガー様を大人っぽくみせている。ほんとうに低音の響かせ方が素敵で……。失礼を重々承知で言うのですが、正直、佐久間さんタガー様は大井町で拝見したときにあれって思ったタガーでした。デュトナンでマンク(お相手は確かきたむマンク)に押されてしまっていた印象があったり、全体的にタガーってもっともっと魅力的にみせられる役じゃないかなって思ったりして。でも今年bridgeを拝見した時に、一曲一曲、曲の魅力が伝わってくる歌声を聴かせてくださって、それで今の佐久間さんのタガーがみたいって思いました。ほんとうに素晴らしかった……。多少スケジュールに無理をしてでも行ってよかったです。佐久間さんタガー様も複数回観たかったな……。

 

 

タガーへのラブコールが止まらないのでこの辺にします。

他に特に印象に残っているのは、佐藤さんのボン様!ボンパルリーナ、雌猫のなかだと最推しキャットです。佐藤さんのボン様はどの瞬間を切り取っても優雅で美しいところが好きです。ダンスの最中は当然のこと、表情ひとつとっても常に美しい。いぬになってすら優雅。それからジェリクルソングの「夢の中に~」の一音目からわかる歌声の美しさ。マキャナンの「貴方の傍に潜んでいるぞ」の時の指使い。タガナンでタガーにスルーされたあとの憤慨のお顔の可愛らしさ。今期のボン様だと一番多く拝見した方なだけあって、回数を重ねるごとにどんどんノックアウトされていきました。レンジ上でタガーと絡むところとか好き×好きで頭がパンクする。

真瀬さんジェリロ/グリドルも観られてよかったキャストさん。真瀬さんが劇団四季に在団することを発表された時真っ先に思ったのが福岡キャッツのジェリロで観られるかも!でした。初日からめでたく夢が叶って嬉しかった。最初の高いツェから絶好調の歌のお姉さんことジェリロでしたがグリドルの本領発揮ぶりがよかった。色気と美貌でグロタイを翻弄している仕草が全部素敵だし、「ひややかに素知らぬ顔」の氷の微笑……。最高に素敵です……。

中橋さんのガスにも衝撃を受けた。優しい、皆に好かれるおじいちゃんみたいなガスで、最後ジェリロに後ろからハグされるところで胸が詰まって堪らない気持ちになった。今際にさいごの言葉として自分の思い出話を語って聞かせているガスが、生き生きと、楽しそうにグロールタイガーを演じるので、中橋さんガスのガスナンの最後はどうしても涙が出てきていた。

 

好きなところを逐一書いていくとほんとうにキリがない。全部の猫に個性があって、見どころがあって、みるたびに発見があって、年を追うごとにどんどん好きになっていく作品。

キャッツには「生きる力」を貰いに行っているなと毎度思う。演劇を楽しみに行っているというよりは栄養を受け取りに行っている感覚の方が近い。なんか時々「キャッツが観られてうれしい!」って感情が吹き出してスキナンとかで泣いてました。

今福岡猫に行きづらくなってしまったのですが、改めてふらりとキャッツに行ける環境がいかに自分に元気をくれていたのかを感じています。7月から5か月間、あとちょっとがんばったらキャッツに行けるからがんばろうって思いながらがんばれていたのが幸せだった。明日を生き抜く力をくれるこの演目が大好きです。また観られる日を楽しみにしています。

とはいったものの、私が行きづらくなってから分部さんリーダーがデビューされるし玉井さんマンゴはお戻りになられるしリハ見はあるし!!!!!!!行きたい!行きたい!行きたい!今すぐ博多に飛んでゆきたいよ……。

 

 

以下誰を何回みたのか自分用カウント(敬称略)

グリザベラ        金原2・江畑2・折笠3

ジェリロ・グリドル    真瀬2・奥平3・小野2

ジェニー         花田3・安宅2・田代2

ランペ          長谷川5・片岡2

ディミ          小野・原田3・円野3

ボン様          山崎・佐藤5・小野

バブちゃん        柴本7

タント          野田2・武田2・間辺3

ジェミマ         加島4・平井2・沙耶

ヴィク          小島6・引木

カッサ          吉村5・山田・片岡

デュト様          飯村3・橋本4

ガス・グロタイ/バストファ 正木2・藤田2・中橋3

マンク           金本5・岩崎2

タガー          上川5・大森・佐久間

ミスト          横井・押田5・桒原

マンゴ          森田5・蔦木2

スキンボ         小林3・田邊4

コリコ          千葉4・一色3

ランパス         森4・河上3

カーバ          河津6・計倉

ギル           肥田4・後藤2・新庄

マキャ          中村4・文永2・中村

タンブ          吉岡3・田極・松永2・岩崎

 

最後にあとから自分が飛びやすいように各公演のツリーを貼っとく。

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はじめての柿喰う客─『恋人としては無理』感想

初めて劇団柿喰う客の作品をみてきたよ~楽しかったよ~~って日記。『恋人としては無理2021』in仙台、行ってきました。

柿喰う客さんの作品は戯曲は何本も読んでいるし、映像は何作品かみているけれど生で観劇したことはなく、いつか劇場に行きたいな~~と思っていた。だからといってまさか初観劇が仙台になろうとは夢にも思っていませんでした。中屋敷さんの脚本で記憶に新しいものといえば昨年の黑世界の『求めろ、捧げろ、待っていろ』だけれどあれは演出は末満さんだから別ものですね。

切欠は舞台『刀剣乱舞』无伝で素敵なお芝居をみせてくださった牧田哲也さんが出演されていたこと。情報解禁が公演からおよそ一カ月前だったのでびっくりしました。まあでもその辺は西田大輔氏に鍛えられており初日の一週間前に情報解禁されて福岡から東京に日帰りしたこともあるので大丈夫(ではない)。結構ギリギリまで行くかどうか迷ったのですが、東北行ったことないから行ってみたかったのと同日に友人も来るというのとスケジュールがどうにかできそうだったのとなんだかんだ条件が重なったので行ってきた。なにより、柿喰う客の作品に出演されている牧田さんを観たい観たいと6月からずっと言っていたし。結果、こうして御縁を頂けてよかったです。

初めての仙台は観光もロクにしないまま日帰りになっちゃったけど当日は大寒波に見舞われ寒さは堪能したし、ずんだ餅も牛タンも食べたし、公演は楽しかったのでヨシ!

 

劇場となるパソナシアターは仙台駅から三駅、駅に出るとすぐ目の前なのでとっても便利で助かりました。そして受付がまんま地方小劇場のそれで久しぶりの感覚にテンションが上がった。折り込みチラシも貰うの超久しぶり!!地元小劇場に何回かお邪魔していた頃を思い出した。

土曜日の公演をマチソワしたのですが、二回見てよかったです。兎角衝撃的すぎて、一回目はあまりお話を咀嚼できなかった。とにかく、凄いものをみたな……と思いながら劇場を後にして、二回目をみて、物凄い芝居だなと。

 

以下感想。そんなに長くないし、書きたいことを書きたい順に書いているので読みやすくもないのですが、記録としてね……。というか今週が怒濤の観劇週なので言葉に残せるうちに残しておかなければと思った。

 

開幕、直後言葉の濁流がとんでもない照明とともにわーって襲ってきてうわあ柿喰う客だ~!!!となる。地方の小劇場にありえん大量の照明が吊ってあって劇場に入った瞬間ちょっと笑いそうになった。あの量の照明が点灯した時の迫力たるや。凄いですね。Qが地獄みたいになってそう。

肝心の台詞は早すぎて割とすぐに聴きとるのを諦めてしまったのですが初手このインパクトを浴びせて客席を一気に引きずり込むのうまいな……と思った。大量のレトリックを一気に浴びるので、柿をみにきたんだ~!!とテンションが上がるのは確か。それから変なタイミングで自己紹介、ああ、コレコレみたいな。

あとシンプルにこのスピードで台詞を言い熟せている役者さんたちが凄い。マイクがないのに台詞が通ること通ること。凄い。この一群の台詞は後半でもう一度繰り返すので聴きとれなくてもさしたる問題がないんですね。なるほど。

混乱しつつも「ナザレのイエス」とか「十二人の弟子」とかそういうワードは耳が拾ってくれたので「恋無理」ってそういう話なの!?という第二波の衝撃。事前のプロモーション的に全然そんな感じじゃなかったのでそこでもびっくり。ユダりん、スーパーミラクルかわいい。完全に余談ですがついこの前太宰の駆け込み訴えを読み返したので最近ユダの話によく触れるな……などと思った。そこまでの衝撃がでかすぎてユダりんのラップ(その1)とツアコンに連れられてくる一向にはあまり驚かなくなっていた。麻痺している。

ラップによる導入でエルサレム入場のところに話を持ってくるわけですが、十二使徒のはなしをするのに人足りなくない?という疑問を抱いたのは役者さんがぬるりと役を入れ替わった後でした。今更ながら気が付いたってやつですね。このぬるぬる役を入れ替えながらどんどん話が進んでいくのが凄く新鮮だった。一人が何役もするし、何人もで一役をする。前者はともかく後者がかなり新鮮でした。ミュージカル的なのかな。ミュージカルだとその人しか知りえないはずのキャラクターの心情を何人もが共有して歌いあげることはよくあるから。役を演じるというよりは作品そのものを演じているという感覚というか。それはそうと「ピカ!」っていったあとにぬるりとキレ気味のペトロに転身できるのはどうかしているけれど。全編通して加藤ひろたかさんのカメレオンぶりに翻弄され続けた印象。

そこ以外にもちょこちょこ中屋敷さんの演目ってミュージカルっぽいところがあるなと思った。通常の会話ではなくて音のリズムを優先するところとか。あと先述した「冒頭のセリフが後半で登場する(しかも冒頭とは全然違う温度感で)」というのは、まさにリプライズですね。

十二使徒がつぎつぎ出てきて自己紹介する場面ではどんどん役者さんが入れ替わり立ち代わり、濃いめの味付けで今回の作品のそれぞれのキャラクターの立ち位置のようなものを説明してくれるのは圧巻でした。一人が複数役しているので、こっちの役にみせかけて実はこっち!みたいな笑いのフックになるのが面白かった。後半の居酒屋のシーンの牧田さんとか。あ、タダイなんだ!?という笑いが来る。

なんだかんだ作中一番テンションが上がったのはホストエルサレムのシーンでした。仕方がない。人間の身体はシャンコ聴くとテンションが上がるようにできている。しかしホストエルサレムって名前どうなんだ。歌舞伎にあるホストクラブの店名がホスト「歌舞伎町」みたいなものだよな……。ホスト「中州」。ホスト「すすきの」。ホスト「エルサレム」。これでもかと設置してある照明をふんだんに使ってシャンパンコール、楽しい。しかもやたらクオリティが高い。アフタートークのときに裏でひろたかさんがずっと練習しているとお聞きして納得しました。シャンコもかなり独特なリズム感で小気味いいですよね。中屋敷さんが初めてシャンコに触れたとき「こんな日本語があるんだ!」と驚いたと言っていましたが、それを聞いたときにはあなたがそれを言うのかと思ったり。体入ホストさんの源氏名のくだりは日替わりなのかな。ソワレで牧田さんが耐えきれず吹き出していてフフフとなりました。

あとはゆだりんオンステージ!照明の色もゆだりんもかわいい。全体を通して出番でいうとそこまで多くないのにここぞというところで存在を発揮するゆだりん。一番笑ったセリフもゆだりん関係でした。ピラトの名前当てからの「日本人ならそんなもんです」、何気にツボだった。それはそうなのよ。みんなでわいわいしているところにあまりいないからそんなに出番が多く感じないのか。そういえば冒頭で「友達いない」って言ってたね。表情もそんなに豊かではなかった印象。唯一、いえすくんにキスした後笑みを浮かべていたのがはっきりとみてとれた表情でしょうか。あそこ照明も相まってとても綺麗でゾクゾクした。ゆだりんをメインで演じていた斎藤明里さん、最初出てきたときに足が細すぎてびっくりしました。スタイル良すぎ。どこかでお名前を拝見した覚えがあるなと思ったら、文ステですね!ナオミちゃん!ナオミちゃんが出ているのは一作目を映像で一度みたきりだったので気が付かなかった。

一回目と二回目で随分印象が変わったのはペトロ。というか一度目は暫くの間ペトロとヨセフも女になっているのに気が付かないままみていたのでこの二人周辺のシーンの印象は随分変わりました。ペトロについては序盤の引率をしている場面から女性的な動きはしていたのだけれど、そういうキャラクター付けの男性だと思ってみるのと男性が演じている女性だと思ってみるのとだと違う。加藤ひろたかさんのペトロ、どうしてあんなに色気があるんでしょう。一度女性と認識してみると凄く好きなタイプの女性の造形をしていたことに気が付く。言動のひとつひとつが目を引く。どうしようもないのに好きな男性から離れられず傍にいるし第一使徒として毅然と振舞おうとしていてもそれは表面張力でギリギリ零れないようにしているコップに入った水みたい。「自分の気持ちに押さえつけられるほど弱くなかったんだよ自分の気持ち」ってセリフが大変印象的でした。それからメインでペトロをしていた加藤ひろたかさん役の切り替えがうますぎませんか。すっごく印象に残っているのがフィリポの財布を没収しようとして元カノと揶揄されたあとのシーン。「そういう……なんだ?」の「なんだ?」の言い方の凄みもすごかったし、その後パッと小ヤコブに切り替わるのがとんでもない。なにより、小ヤコブの長台詞を言い終わった後、ペトロに戻って舞台中央に蹲り顔をあげた時髪の隙間から覗いた目に鳥肌が立った。一瞬であそこまで変われるものか。情緒どうなってるんだ。とんでもないなと思って観ていました。

そして今回の観劇のきっかけになった牧田さんのお芝居。凄く素敵でした。牧田さんがメインで演じていたのはやっこさんことヤコブ。二番弟子で、ペトロの幼馴染で、ヨセフの兄という作中の女性関係に近い場所にいるひと。いえすくんに対してフラットな立ち位置でいるのかなっと思っていたら最後に自分で言ってましたね。私は作品全体を通して、結構泥臭いというか人間臭いのがヤコブだなという風に感じて。いえすくんに傾倒していないのも含めて。そういった印象が牧田さんのお芝居ありきのものなのだろうなと。私は柿喰う客のお芝居の「そんなんあるかい!」みたいなぶっとんだ舞台設定に日常生活ではおよそしないような話し方でセリフを回す、虚構に虚構を重ねたみたいな空間のなかなのに、ああ、こういうことあるよねとかこういうものだよねってどうしてだか共感できてしまうみたいなところを魅力に感じていて。それと牧田さんの今回の役どころとお芝居が凄くマッチしていたというか、その「どうしてだか共感できてしまう」所以が牧田さんのお芝居にあったのかなと感じた。きっと、セリフ回しが一番感情的なんだとおもいました。最後の方のペトロと話すところとかヨセフと話すところとか、最後の独白とか。ヨセフとのシーンは、ヨセフがどんな人なのかを最後の最後ではじめて出すのが狡いなと思いました。ヨセフが吃音になっているのは生まれつきともとれるしいえすくんが死んでしまったショックともとれるし。「生きろ」って結構強くて残酷な言葉で、他の使徒たちの状況からも結構周囲が絶望的なのに、それを言い切らないといけないヤコブの苦しさと優しさが見えるお芝居が凄く好きだった。独白の場面ではそれまでみえそうでみえていなかったヤコブ個人の人間の輪郭がはっきりするようで胸がウッとなる。そんな感情を抱えながらペトロやヨハネ、いえすくんの側に居たのだなと。それから最初のツアコンの動きに戻るのが、余韻を残す終わり方でいいなあと思いました。それとは別に柿喰う客のリズムで芝居をする牧田さんは物凄く新鮮で楽しかった……。「柿喰う客の牧田さん」のお芝居がみられたことが本当に良かった。

 

エス十二使徒の物語って割と擦り倒されたテーマだと思うのですが、2008年の作品にも拘わらずそれを全く感じない新鮮な面白さ。フランスでの演劇祭に来る外国の人に見せるためにつくった作品ということで、日本語のレトリックをふんだんに詰めてあるとおっしゃっていました。それが嵌ったんだろうな。それから男女混合のギミックと配役の塩梅と。恐らく女性の役を全部女性がやってしまうと生々しすぎてしまうような気がして。マチソワ間に戯曲にざっと(本当にざーっと)目を通したのですが戯曲読んでもこの本からあの芝居が組みあがるの割と意味が分からなくて凄い(あとトムハンクスとダヴィンチは普通に脚本上にいて笑った)(突如現れる劇団代表・脚本演出と看板俳優、どうかしている)。密度が高すぎて70分がものすごく長く感じました。中屋敷さんの頭の中はどうなっているのだろう。